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『マイ・ブロークン・マリコ』タナダユキ監督 好きでやる以上、原作を変える必要はない【Director’s Interview Vol.241】

『マイ・ブロークン・マリコ』タナダユキ監督 好きでやる以上、原作を変える必要はない【Director’s Interview Vol.241】

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役については説明しない



Q:原作への思い入れの強さはシイノとマリコへの思い入れの強さにも比例すると思いますが、永野芽郁さんと奈緒さんはどのタイミングで思い浮かんだのでしょうか。


タナダ:プロットを書いて誰がいいかなと話していたときだったので、脚本の初稿が出来るくらいのタイミングだったと思います。


Q:実際に二人にお会いしてバッチリだったと。


タナダ:バッチリでしたね。今回はちゃんとお芝居が出来る人が絶対条件ですねと、プロデューサー陣と話していたんです。自分と同じ覚悟を持ってお芝居に挑んでくれる人でないと乗り越えられないと思っていましたが、二人に会った瞬間にこの人たちなら大丈夫という感じがすごくありました。


Q:今回は原作マンガという分かりやすい指針がありますが、役についての説明は二人にされたのでしょうか。


タナダ:オリジナル/原作モノに関わらず私は基本的にあまり説明しません。もちろん私の中にその役のイメージはありますが、それは言わないですね。その人に委ねる気持ちで脚本を渡すので、こちらからああだこうだ言ってその通りに演じられてもつまらない。この脚本を読んでこの人はどう感じて何を現場で見せてくれるのか、それが面白いんです。


Q:お二人はそれぞれ、シイノとマリコとしてその場に来ているような感じだったのでしょうか。


タナダ:そうですね。二人が真摯に役に向き合ってくれたことが大きかったと思います。



『マイ・ブロークン・マリコ』(C)2022 映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会


Q:永野芽郁さんは撮影前から衣装のドクターマーチンを履き慣らすなど、色々と役作りをされたと聞きます。


タナダ:芽郁ちゃんには撮影の1年近く前にお会いして、そこからすぐドクターマーチンをお渡ししました。マーチンって本当に固いので自分の足になじんでないと撮影の時は痛いだろうなと。それで1年かけてなじませてくれたのですが、かなり頑丈なので原作のボロボロな感じまでにはなかなか辿りつかない。そこに美術の“汚し”も加えて、やっといい感じになったと思います。


また、芽郁ちゃんは元々タバコを吸わないので、ネオシーダー(タバコのように火をつけて煙を吸う咳止め薬)で練習してくれていました。シイちゃんってタバコを吸うのがサマになっているキャラクターですが、普段タバコを吸ってない人がやるとすぐバレちゃう。それを心配しましたが、芽郁ちゃん自ら「練習しておきたい」と、かなり早い段階から取り組んでくれていたので、撮影の時はすごくサマになっていた。そういう多くのことに助けられて出来あがっていった感じがありますね。


Q:ライターで火を点ける感じもすごくサマになっていました。


タナダ:あれ?10年くらい吸ってました?みたいな感じになってましたよね(笑)。また、シイノの中学時代を演じてくれた子役の佐々木告ちゃんもタバコの消し方が堂に入ってた(笑)。これには芽郁ちゃんも驚いてましたね。


Q:奈緒さんの方も、映画に出てくる手紙を映っていないものも含め全てご自身で書かれたと聞きました。


タナダ:そうなんです。奈緒ちゃん自ら言ってくれて。その手紙は奈緒ちゃん演じるマリコがシイノ宛に書いたものだから、映らないものに関しては私は読んでないんです。何だか人にあてた手紙を勝手に盗み見るみたいな感じになっちゃうからやめておきました。もちろん奈緒ちゃんは「読んでも全然大丈夫です」というスタンスで書いてくださっているのですが、やっぱり手紙って個人に向けて書くものなので、なんか盗み見るのは違うかなぁと。便箋も奈緒ちゃん自身で選んでくれたくらい気持ちの入ったものですしね。


Q:現場での監督のOKが早くて二人とも驚かれたそうですが、二人に細かく演出する必要なかったということでしょうか。


タナダ:演出が仕事なので多分仕事はしてると思いますが(笑)、細かく言うことが演出ってわけではないかなと。あくまでも自分が見ていてワクワクするかどうかを一番重要視しています。あとは撮りながら常に編集のことを考えているので、これでいけると確信できればOKを出します。多分そこは判断が早い方かなと思いますね。


Q:マキオ役の窪田正孝さんについても聞かせてください。窪田さんが出演された『ふがいない僕は空を見た』(12)でその素晴らしさに驚きましたが、今回もまたとても“いい感じ”で登場してきます。タナダ作品と窪田さんの相性の良さも感じてしまいますが、今回窪田さんとはどんなことを話されましたか。


タナダ:私は俳優さんとあまり話さない方だと思うんです。脚本って恋文みたいなものだと思うので、誰に対しても、役を受けるとなった以上は向こうもそれ相応の覚悟だろうと信頼している部分があります。今回は、マキオってすごく好きなキャラクターだったので、そのことだけは伝えました。プレッシャーを与えただけだったかもしれませんが(笑)。シイノやマリコだけでなくマキオ自身もすごく傷ついてきた人だと思うので、その人だからこそ言える言葉に、静かな力が必要だった。だからこそ本当に窪田くんで良かったなと思いましたね。




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