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『ロマンスドール』虚偽を脱いで、愛の形をふたりで創る――セックスという“受容”の温もり

『ロマンスドール』虚偽を脱いで、愛の形をふたりで創る――セックスという“受容”の温もり


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15年越しに実現した、監督念願の企画



どれだけ君の心に、寄り添えたのだろう。

どこまで貴方の身体に、残せたのだろう。

夫婦の形を模索し続けた、男女の十年愛。


 恋と愛、男と女。嘘と秘密。きっとこの先も描かれ続けていく、普遍のテーマたち。発表を間近に控えた第92回アカデミー賞でも、離婚を選んだ夫婦を描いた『マリッジ・ストーリー』(19)が作品賞・主演男優賞・主演女優賞を含む6部門にノミネートされた。「夫婦」とはきっと、人間が人間である以上、永遠にとらわれてしまう関心ごとなのだろう。別の場所で生まれて、違う景色を見て育った他人同士が、愛という不確かなものを信じて、「家族」になる。結婚とは、私たち各々の人生に訪れる、最大級の劇的な瞬間だ。


 普遍であるがゆえに新しさを生み出すのが難しい題材でもあるのだが、ここに美しく、儚くも挑戦的な傑作が誕生した。高橋一生と蒼井優が共演した珠玉のラブストーリー『ロマンスドール』(20)だ。監督・脚本を務めるのは、『百万円と苦虫女』(08)、『ふがいない僕は空を見た』(12)、『お父さんと伊藤さん』(16)など、人と人の不格好で哀しい繋がりを描き続けてきたタナダユキ。



 美術大学を卒業したフリーターの哲雄(高橋)は、先輩に紹介されたことからラブドールの職人として働き始める。ある日、よりリアルなドールの制作を命じられた哲雄と師匠の相川(きたろう)は、「医療用の人工乳房を作るため」と嘘をついて美術モデルの園子(蒼井)を呼び、型取りを行うことに。当日、目の前に現れた園子に哲雄は一目ぼれしてしまい、2人は付き合い始める。だが哲雄は嘘をついて呼んだ手前、園子に自分の職業を伝えられず、うやむやにしたまま結婚することになり、仕事に忙殺されて歳月が流れてゆく。徐々に会話が減り、セックスレスにもなっていく2人。そんななか、園子もある秘密を抱えていたことがわかり……。


 本作は元々、雑誌「ダ・ヴィンチ」で2008年に掲載されたタナダ監督書き下ろしの小説であり、約12年の年月をかけて映画化された入魂の一本だ。さらに言えば、タナダ監督の『月とチェリー』(04)の制作段階で、「ラブドール職人であることを隠している夫とその妻」という構想は存在したという。タナダ監督が長編デビューしたのは2001年のため、映画監督人生の約3分の2をこの物語と過ごしてきたわけだ。




 ではなぜ映画化までにこれほどの時間を要したのかというと、「女性がラブドールを題材にして作品を書く」ことに対する風当たりの強さが少なからずあったようだ。プロットや小説の執筆のために関係各所に取材を行おうとするも締め出されることも多く、タナダ監督は資料を基にほとんど想像で書くしかなかったそう。


 だが、少しずつ時流が変わり、2017年に行われたラブドールの展覧会、オリエント工業40周年記念展「今と昔の愛人形」では、来場者の約6割が女性、しかも若い女性が長蛇の列を作って並ぶという、5年前では考えられない状況に。自らも展覧会に足を運んだというタナダ監督がプロデューサーに企画を打診し、映画化が動き始めた。



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