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『プリンセス・ダイアナ』エド・パーキンズ監督 膨大なアーカイブ映像で観客をタイムスリップさせる驚きのドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.243】

Kent Gavin

『プリンセス・ダイアナ』エド・パーキンズ監督 膨大なアーカイブ映像で観客をタイムスリップさせる驚きのドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.243】

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1,000時間に及ぶ映像と格闘



Q:編集する前のアーカイブ映像は膨大な量だったそうですが、その中から使う映像を選択する過程はどのようなものだったのでしょうか?


パーキンズ:彼女は世界で最も写真や映像を撮られた人物であることは間違いないので、圧倒的な量の映像があります。だからアーカイブ担当のチームには「とにかく、ダイアナが出ている映像は全部ゲットしろ!」と指示しました(笑)。私は結果的に1,000時間くらいの映像を観ました。最初の6カ月間は、1日8~12時間くらい記録映像をただ見続ける作業が続きました。はっとさせられる瞬間や、自分に響く何かがあるかを探る作業でした。それはまるで、広大な海の中にキラリと光るものを見つけていくような、本当に忍耐のいる作業でした(笑)。


Q:映像を絞り込む際には何か新たな発見があったのでしょうか?


パーキンズ:興味深かったのは、彼女のボディランゲージです。実は彼女は公に多くのコメントを残している人ではありませんが、自分のイメージを人々に届けることにすごく長けていたと思います。それはちょっとしたボディランゲージで行われるんです。例えば頭をちょっと傾けたり、口角を少しだけ上げて微笑むような顔をしたりする。それを見た私たちは彼女のその時の感情がどのようなものかを知りたくなる。そういう部分がすごく興味深かったので、この映画では意識して彼女が喋っていない静かな瞬間を積み重ねています。



『プリンセス・ダイアナ』Richard Ellis / Alamy Stock Photo


普通の人々の声でダイアナを語る



Q:アーカイブを探る中でどんな風に構成が固まっていたのでしょうか?その過程を教えてください。


パーキンズ:まず準備段階では、彼女に関して書かれたものを片っ端から読みました。それからストーリーを紙に書いていき「こういう流れでやってみたらどうだろう」と構成を組んでいきました。その過程で気づいたのは、彼女の物語は古典的なギリシャ悲劇に全てぴたりとあてはまることでした。婚約や結婚など、彼女の人生の大きな事件は、すべてドラマティックな悲劇のように感じられて興味深かったので、その視点を軸にして作っていこうと最初に決めました。それから半年かけて1,000時間のフッテージから3時間くらいのラフカットを作って、スタッフ皆が「やったね!」と達成感に溢れました。


でもすぐに、「これって皆が知っているダイアナの物語じゃないか」と気付いたんです。彼女の人生でどのようなことがあったのか、どんな試練があったのかというのは誰もが知っているわけで、新しい事実を明かすような映画になっていなかったんです。その時に「ここがスタート地点なんだ」と気が付きました。そこからより重層的に、よりニュアンスを込めて編集をしていきました。その作業の中で重要だと思ったのは、いろいろな人が話している声です。そう思った理由の一つもギリシャ悲劇でした。古典的な演劇の場合、ナレーションや歌を担当する人物が何人かいて、ストーリーが語られていきます。考えてみれば、本当に多くの人がダイアナの人生を分析したりディベートしたりしてきました。そこで今回の映画に入る人々のコメントは、専門家や彼女を実際に知る人ではなく、あなたや僕のような普通の人々の声にしたのです。


なぜかダイアナのことになると、誰もが「自分が意見を言ってもいいんじゃないか」と感じます。彼女は誰にとってもエモーションを感じさせる人物です。だから一般人の声を入れることによって、そのニュアンスがさらに伝わるのではないかと考えました。



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