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『プリンセス・ダイアナ』エド・パーキンズ監督 膨大なアーカイブ映像で観客をタイムスリップさせる驚きのドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.243】

Kent Gavin

『プリンセス・ダイアナ』エド・パーキンズ監督 膨大なアーカイブ映像で観客をタイムスリップさせる驚きのドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.243】

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ホラー映画には「ファウンドフッテージもの」というジャンルがある。「偶然発見されたテープなどに記録された恐怖映像」という設定で映画を構成する手法だ。『プリンセス・ダイアナ』はまさにこの手法で構成された稀有なドキュメンタリーだ。本作はもちろんホラー映画ではない。しかしナレーションやテロップなど、客観的な視点による解説を一切排除し、膨大なニュース映像などによって、ダイアナの生涯を紡いで見せたことは驚嘆に値する。このような手法によって、本作は今まで見たことのない新鮮なダイアナ像を提示し、映像の中に自らの解釈を発見する喜びを観客に与えることを可能としたのだ。


このユニークなドキュメンタリーをものにしたエド・パーキンズ監督に、本作実現の裏側を語ってもらった。


Index


ナレーションを使わない理由



Q:ダイアナ妃にまつわる物語は何度も映像化されていますが、なぜ本作を製作しようと思ったのか、その意図を教えてください。今までの作品とはどう差別化しようとしたのでしょうか?


パーキンズ:今までのドキュメンタリーは、ダイアナの心理を理解しようとする視点の作品が多かったと思います。でも本当に彼女がどう感じていたのかはわからないので、そうした作品はどうしても製作者の憶測が入ってしまうんです。だから私は「ダイアナがどんな人物だったのか」という映画ではなく、ダイアナそのものを見ることで、私たちが自分の姿を鏡の中に見るような映画を作ろうとしたんです。「ダイアナや王室と自分たち」「セレブリティと自分たちとの関係」といった、観客が普段はあまり考えない種類の問いかけをする映画ができると思いました。


また、ダイアナの物語の中で、私たちが果たした役割はなんだったのか?という点も追及したいと思いました。まるで自分が彼女の人生の一部であったかのように感じている人は多いと思います。だから私たちが「彼女の物語」に共犯関係であったのかもしれないと思える部分を、掘り下げていきたいと思いました。



『プリンセス・ダイアナ』Michael Dwyer / Alamy Stock Photo


Q:本作はアーカイブ映像のみで構成されており、映像を客観的に解説するナレーションがないことが大変ユニークです。このような手法を選んだ理由を教えてください。


パーキンズ:ナレーションによって観客がどういう風に感じるべきか、ダイアナが何を感じていたのか、という製作者の解釈を押し付けたくなかったんです。逆に観客が自分の解釈を持ち込めるような余地を残しておいて、自分なりの解釈や結論に至ってほしいと思いました。それは、皆さん自身の奥底にあるものに触れることだとも思います。この映画は記録映像をタイムマシーンとして、過去に戻って彼女の物語を改めて体験するようになっています。ナレーションがないので、観客自身の思いやダイアナに関する経験、そういったものを投影しながら観ることができます。それは今までにない新しい映画体験になるのではないかと思います。


ダイアナに全く無関心な人は少なくて、彼女の人生や死については賛否両論ありました。だから、その死から25年が経ってからも、私たちは彼女を分析したり、映像化したりしています。今人気のドラマ「ザ・クラウン」もそのひとつです。皆少なからずそうした映像作品を観たり、本を読んだりしてきているわけで、そこに自分の経験も加えて、ダイアナの物語を体験し、自分自身の最終的な解釈を見つけてほしいと思っています。




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