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『プリンセス・ダイアナ』エド・パーキンズ監督 膨大なアーカイブ映像で観客をタイムスリップさせる驚きのドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.243】

Kent Gavin

『プリンセス・ダイアナ』エド・パーキンズ監督 膨大なアーカイブ映像で観客をタイムスリップさせる驚きのドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.243】

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ダイアナの本当の魅力



Q:本作にはアンゴラの地雷原を歩くダイアナなど、有名な映像が出てきません。何故そのような映像を使わなかったのでしょうか。


パーキンズ:アンゴラの映像もそうですし、結婚式やチャールズが「愛というのがどんな意味を持っていたとしても…」と答えている有名な映像も使っていません。彼女の物語がよく知られているからこそ、あまり知られていない部分に観客が目を向けられるようにしたいと思ったからです。


面白いのは、観客はこの映画を観終わった後に、アンゴラや結婚式の映像をまるで映画の中で観たように感じてしまうことでした。頭の中で点と点を線で結んで、勝手にその間も観た気になってしまっているんです。面白いですよね。私としても彼女の大きな事件を組み込まずに映画を構成することは挑戦でしたが、そうしなければ、ダイアナに関する他の映画と同じようなものになってしまったかもしれません。



『プリンセス・ダイアナ』Justin Leighton / Alamy Stock Photo


Q:編集で他にこだわったポイントはなんですか?


パーキンズ: まさに今この瞬間に、映像で映し出される出来事が起きているんだ、というように感じてもらえる編集を目指しました。観たことがある映像だとしても、長くみせることで今までと違った風に観てもらえます。観客をエモーショナルな旅にいざなうような作品にしたかったし、頭で理解するのではなく、感じてもらえるような映画にしたかったんです。


Q:本作を見て改めて感じたのはダイアナ妃がとてもフォトジェニックで彼女が画面に出ている間は全く飽きないということです。彼女の何がそこまでの魅力を生むと考えますか?


パーキンズ:ダイアナのことを「白いキャンバスのような人だった」という人もいます。私も1,000時間のフッテージを見ましたが、いまだに彼女は謎ですし、彼女のことは理解できていないと思います。一つ言えるのは「色々なダイアナがいた」ということです。誰といるか、何をしているか、人生のどの地点にいるのかによって、彼女はまったく違って見えました。そういう資質があったからこそ、多くの人が共感できたのではないかと思います。


また一方で白いキャンバスのようだからこそ、観ている私たちが自分たちの夢とか希望とか、あるいは恐れというものを投影できる人であったとも思います。彼女の死も、彼女を悼むことで、私たちの人生に起きた辛いことに対する悲しみまで表現できる。そういうことを彼女に許されたというふうに感じてしまうんです。つまり、彼女は器のような存在で、彼女が亡くなったことに対して悲しんではいるけれど、同時に自分の人生や自分に起きた不幸も弔える、そういう器になることができた人だったと思います。




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監督・脚本:エド・パーキンズ

これまで数々の国際的な映画賞を受賞し、アカデミー賞ノミネート歴もあるドキュメンタリー映画監督。2015年、映像業界で働く有望な若手イギリス人をサポートするBAFTA Breakthrough Britsに選出。この5年間はLightbox専属で多くの作品を手がけている。これまでNetflix、BBC、HBO、Sky、The Guardian、ナショナルジオグラフィック、Channel 4の作品を監督してきた彼は、2009年、『プロジェクト・ニム』『THE EAGLE (原題)』、BAFTA受賞作『THE IMPOSTER(原題)』、アカデミー賞受賞作『シュガーマン 奇跡に愛された男』の製作舞台裏ドキュメンタリーを監督。2014年、彼にとって初めての長編ドキュメンタリー映画『GARNET’S GOLD(原題)』がトライベッカ映画祭でプレミア上映され、グリアソン・アワード最優秀新人賞を始めとする多くの賞を受賞。2015年公開の短編ドキュメンタリー『IF I DIE ON MARS(原題)』は複数のプラットフォーム合計で100万回を超える再生回数を記録。Channel 4とFX Studiosのドキュメンタリー番組『BARE KNUCKLE FIGHT CLUB(原題)』は英タイムズ紙に「今年最高のドキュメンタリー作品」と絶賛された。2018年、The Guardianの委託で監督した短編ドキュメンタリー『ブラックシープ』で13の国際的な賞を受賞し、第91回アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画賞ノミネートを果たす。2019年、Netflixオリジナルの長編ドキュメンタリー『本当の僕を教えて』で英国インディペンデント映画賞にノミネート。本作『THE PRINCESS』は彼の3本目の長編ドキュメンタリー映画となる。



取材・文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)





『プリンセス・ダイアナ』

9月30日(金)TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー

配給:STAR CHANNEL MOVIES

© 2022 DFD FILMS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

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