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『すべて忘れてしまうから』岨手由貴子監督 瞬発力で生まれる面白さ【Director’s Interview Vol.255】

『すべて忘れてしまうから』岨手由貴子監督 瞬発力で生まれる面白さ【Director’s Interview Vol.255】

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勢いで書いた脚本の良さ



Q:映画ではなくドラマの演出ということで、何か違いは感じましたか?


岨手:テレビドラマは多くの人が分かりやすい物語にする必要があるんだろうと、何となく思っていました。ただこの企画に関しては、走り出したときからかなり変わったアプローチで、チャレンジングなものを目指す雰囲気があった。王道ではない良さを描く必要があったので、その意味では分かりやすくすることを第一にはしませんでした。ただし連続モノであることは映画とは大きな違いでしたね。


Q:今回のドラマの舞台に「Bar 灯台」という場所があり、主人公はじめメインの登場人物はお約束のように毎回そこに集います。確かにそういうのは映画ではあまりないかもしれませんね。


岨手:そうですね。「Bar 灯台」という場所が各話必ず出てくるような作りになっています。観ているうちに店の印象も変わったり、そこに集う人たちへの愛着も深まっていく、そういうことも連続モノの面白さだと思いました。



『すべて忘れてしまうから』© Moegara,FUSOSHA 2020  © 2022 Disney and related entities.


Q:「Bar 灯台」に集う人たちを各話で絡ませることを意識しつつ、脚本は書かれたのでしょうか。


岨手:今回の脚本は緻密に設計せずに結構勢いで書きました。ただそれは決して悪いことだけではなく、緻密に考えたら絶対に書けなかったセリフやシーンがたくさんあって、即興で書く面白さは自分にとっても発見でした。これまでやった映画はクラインクインまでかなり試行錯誤して改稿を重ねていました。一方で今回は、瞬発力で生まれる面白さを信じてやった感じがします。その良さは十分に出ているのではないかと思います。


Q:「Bar 灯台」で繰り広げられる、物語の本筋とは全く関係ないエピソードや掛け合いも面白いです。


岨手:あのバーに集う常連たちは店にいる姿しか描かれないのに、だんだん彼らのバックボーンも感じられるようになる。でもそれは身の上話を切々とするような感じではなく、くだらない会話の中から浮き上がってくる作りになっている。それは実際にバーに飲みに行ったときの隣の人から聞こえてくる会話にも似ています。そんな無責任な面白さがピッタリなドラマになったと思いますね。




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