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『ある男』石川慶監督 「邦画を作ろう」という思いがあった【Director’s Interview Vol.263】

『ある男』石川慶監督 「邦画を作ろう」という思いがあった【Director’s Interview Vol.263】

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ノイズで表現する城戸の状況



Q:城戸が登場する冒頭のシーンでは、飛行機の窓を閉めるときや、里枝と一緒に車で移動するときなど、不穏な空気が醸し出されている気がしました。城戸の登場に関して何か意図したことはありましたか。


石川:映画開始から主人公が登場するまでに時間がかかるので、ここから城戸の話になりますというファンファーレみたいなものが必要だと思っていました。また、それまでは宮崎の牧歌的な空気の中で物語が進んでいるので、ガラッと雰囲気を変えたかった。それは、城戸が置かれているアイデンティティの居心地の悪さみたいなものにもつながってくる。その辺はモノローグで処理したくはなかったので、飛行機の窓から差し込む眩しい光や、城戸の家の周囲の工事音など、城戸の周囲に意図的にノイズを増やして彼の状況を表そうとしていました。



『ある男』©2022「ある男」製作委員会


Q:小籔千豊さんが意外なキャスティングながらも、城戸の同僚としていい感じで配置されていました。

 

石川:妻夫木さんってすごく安定感があるのですが、違う分野の人をあてると自分の知らない妻夫木さんが出てくる。以前にドラマでご一緒した際それを強く感じたんです。今回の城戸にはいろんなアイデンティティがあり、それを保持しきれなくなる側面もある。『愚行録』のときはずっと眉間に皺を寄せているキャラクターでしたが、今回はそうもいかない。城戸にとって一番リラックスできる関係性はどこかと考えた場合、仕事の同僚ではないかなと。それで同僚には柔らかい演技ができる方を考え、小藪さんが頭に浮かびました。あの二人は実際現場でも面白くて、深夜ドラマなどで二人のスピンオフを撮りたくなるくらいくらいでした。


Q:里枝の息子・悠人を演じた坂元愛登くんも素晴らしかったです。本作が映画デビューという新人ですが、どんなことを話されて演出されたのでしょうか。 

 

石川:オーディションで何人も会わせてもらった中で、愛登くんが一番真っさらなキャンバスの中にいたような感じがしました。今回はいろんなストーリーが複雑に絡み合う中で、この母子の話はすごくオーソドックスに感情に訴える軸だったので、あまり芝居っぽい感じにしたくなかった。半ばサクラさんに寄りかかった感もありますが、サクラさんの前に真っさらな愛登くんを置いてみたらうまくいく気がするなと。そういう予感めいたキャスティングでしたね。





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