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『[窓] MADO』麻王監督 デッサンすることが自分の認識も作っていく【Director’s Interview Vol.272】

『[窓] MADO』麻王監督 デッサンすることが自分の認識も作っていく【Director’s Interview Vol.272】

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1年間かけた編集



Q:これまで麻王監督が作られてきたCMは明るく楽しい内容のものが多く、今回の映画とはかなりトーンが違います。何か意識されたことはありますか?


麻王:本当はジャッキー・チェンみたいなアクションコメディをやりたいんです(笑)。作ってきたCMもエンタメ系が多いので、この映画をもっとエンタメにしていくことも出来ました。ただ、今回はあの日記をデッサンすることから始まっているので、日記のニュアンスを忠実にデッサンすることを心がけました。「社会派だからトーンを変えるぞ!」みたいな気持ちでやったわけではなく、自然とこうなっていった感じです。


Q:CM制作の経験が生かされたことは多々あるかと思いますが、その中でも一番大きかったことは何でしょうか?


麻王:CMディレクターになってちょうど10年目ですが、若手のときは短尺のWEB動画をたくさん作っていました。どれも10分くらいのドラマで、そこでドラマタイズする感覚を得ることが出来たと思います。連続モノのWEB動画を8〜10本作れば映画と同じくらいの長尺になりますしね。これがCM制作の経験しかなかったら、またちょっと違ったかもしれません。



『[窓] MADO』麻王監督


Q:CMと映画では尺が全然違いますからね。


麻王:CMだと基本ワンシーンが多くて、映画みたいにシーンの移り変わりがないんです。だからCMのノリで作っていくとシーン毎に毎回オチを作っちゃう(笑)。今回は日記が元になっていて点描が多いので、そのパーツを積み上げていくことが難しかったですね。シーン毎のつながりや流れを考えながら、パーツをつなげていく必要がある。そこは発見でした。


Q:では脚本と編集では構成がかなり変わっている感じですか。


麻王:そうですね。今回はそういうパーツの集積なので、編集は色々やりようがありました。この作品は、文化庁の助成金を受けることが去年の11月末に決まったのですが、その条件が去年の12月末までに初号試写をやることでした。つまり全然時間がなかったんです。とにかく急いでキャスティングやスタッフィングを進め、年末の6日間で撮影し、その後3日間寝ずに編集して作り上げました。「映画って3日で編集できるんだ」って思いましたけど(笑)。それでなんとか初号試写は間に合わせたのですが、そこから劇場公開までの1年間でじっくり編集をやり直しました。


そうやって編集をやり直していくと、色々と足りないものが分かってくる。A家のお父さんが化学物質過敏症を図書館で調べるシーンなどは、最初は撮っていなかったのですが、そもそも観客にこの「化学物質過敏症」を知ってもらわないと理解が追いつかない。それで図書館のシーンを追加撮影しました。最終的に、3回の追加撮影をしています。



『[窓] MADO』©2022 towaie LLC


Q:訴訟を起こしたA家の視点で物語は進みますが、B家の視点が入ってくるタイミング・構成は脚本と編集で同じだったのでしょうか?


麻王:視点を切り替えるタイミングは最初から決めていました。とはいえ、最初の編集したバージョンではB家の要素が全然足りなかったので、B家の母親と団地の方とのシーンなどを追撮しました。


そう言う意味では、本当にデッサンをやっている感覚に近かったですね。一回描いて、置いて、見比べて、判断していく。だからこの1年間の編集はとても大事でした。普通の商業映画だと編集に1年もかけられないと思いますが、今回は自分の資本でやっているからこそ出来たことですね。




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