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『[窓] MADO』麻王監督 デッサンすることが自分の認識も作っていく【Director’s Interview Vol.272】

『[窓] MADO』麻王監督 デッサンすることが自分の認識も作っていく【Director’s Interview Vol.272】

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郊外の団地に住むA家とB家。ある日、A家は階下に住むB家からのタバコの煙害によって「化学物質過敏症」を発症したとして、B家を相手に4,500万円の損害賠償を求める裁判を始める。「横浜・副流煙裁判」と呼ばれたこの実在の裁判は、やがて日本におけるタバコ裁判において大きな問題として社会的に取り上げられるようになる。映画『[窓] MADO』は、その過程で裁判資料として公に提出された“A家A夫の記した4年に渡る日記”からヒントを得て制作された、事実を基にしたフィクション映画である。


監督は麻王。本作は長編デビュー作であり、B家の息子でありながら、両者の関係をフラットな想いで見つめようとする。原告家族「A家」と、被告「B家」。それぞれの家族を通して、「化学物質過敏症」が引き起こす様々な問題や分断を描く。


監督自身が当事者家族の息子という立場ながら、自分の家族に実際に起きた出来事をフィクションとして映画化する。この大胆で新たな試みに挑んだ麻王監督に話を伺った。


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きっかけはA家の日記



Q:監督のご家族に起こった実際の出来事を映画化されていますが、家族を含めた当事者の反応はいかがでしたか。


麻王:家族からは「好きにしろよ」と言われました(笑)。きっかけは、A家のお父さんが書いた日記を読んだことでした。裁判資料として提出されたその日記は4年間に渡る記録になっていて、訥々としたすごく静かな文体ながら、ものすごく色んな感情が込められていた。読み終わった瞬間に、これをドラマにしたいと思ったんです。普通ならドキュメンタリーになりそうなところですが、ずっと張り付いて撮影する時間は僕にはなかった。でもこの日記をドラマ化して映画にすることは出来るのではないかと。しかもうちの家族を描くのではなく、A家のお父さんを主体にしたドラマを撮りたいなと。


Q:実際の裁判は終わったのでしょうか。


麻王:この裁判自体は終わりました。控訴審も2年前に終わっていてB家が勝ってるんです。今は反訴といって、診断することなく診断書を書いた向こうの医師を相手取って、うちの実家が裁判を起こしている状態です。



『[窓] MADO』©2022 towaie LLC


Q:当事者が実際に住んでいる団地で撮影したと聞いて驚きました。


麻王:基本的にはオールロケで、B家のシーンは実際にうちの実家で撮りました。A家は同じ団地内の別の家をお借りして撮らせてもらいました。


Q:相手のA家にはこの映画のことは伝えていないと聞きました。そこはあくまでも事実を基にしたフィクションだからという事でしょうか。


麻王:そうですね。事実を基にしたフィクションということで、当然映画的な表現は入っていますが、僕がやりたかったのは、あくまであの日記を題材にして、日記から得るものをデッサンしていくこと。まずはこの日記に忠実であろうとしました。ただし、事実を再現ドラマとして描くのではなく、日記に書かれている思いや感情を全部汲み取って、それを描き出すことを目指しました。




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