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『逆転のトライアングル』リューベン・オストルンド監督 地獄のディナーシーンはどのように生まれたか【Director’s Interview Vol.284】

ⒸTobias Henriksson

『逆転のトライアングル』リューベン・オストルンド監督 地獄のディナーシーンはどのように生まれたか【Director’s Interview Vol.284】

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とてつもなく知性的で、意地悪で、そして笑える。スウェーデンの鬼才リューベン・オストルンド監督は、人間の本能と生活、社会や経済のシステム、それらの限界を「ブラック・コメディ」という形式で笑い飛ばす=批評するフィルムメーカーだ。


最新作『逆転のトライアングル』(22)で、オストルンドはカンヌ国際映画祭のパルムドールを2作連続受賞する史上3人目の快挙を達成した。しかし本作は、「パルムドール受賞作」という触れ込みからは想像できないほどお下劣でどうしようもない、だから笑うしかない、しかしその向こうにシリアスなテーマが見えてくる怪作である。


今回のインタビューでは、思わず「どうしてこんなことに」と呟きたくなってしまうほど悪夢的なディナーシーンと、オストルンド監督が“コメディ”にこだわる理由にフォーカス。その舞台裏と映画づくりの信念を聞いた。


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悪夢のディナーシーン、どのように作られた?



Q:今日はどうしてもこのシーンについてお聞きしたいと思っていました。映画の中盤にある、嵐の中で振る舞われる「キャプテンズ・ディナー」のシーンです。今までに観たことのないような地獄絵図が展開されますが、どのようにして着想されたのか、どんな狙いで作られたのかをお聞かせください。


オストルンド:あのシーンを思いついたきっかけは、この船には共産主義者の船長(ウディ・ハレルソン)が乗っているべきだと思ったことでした。スピーカーを通じて、船酔いしている乗客に政治的なスピーチを聞かせたら面白いと思ったんですよ。しかも、船長は『共産党宣言』を読み上げる。金持ちの乗客がそれを無理やり聞かされている時、彼らは嵐と船酔いにも耐えているんです(笑)。もちろん監督としては、そのアイデアを、あのシーンにうまく繋げられるよう映画を構築しなければいけないんですが。


僕が大切にしているのは、これまでに映画で観たことのないものを目指すこと。地獄のようなシーンを作るのであれば、映画史上最も壮大な地獄を作ることを目標にしています。今回は嵐や嘔吐のシーンを作りましたが、スタッフには「観客の予想を10倍上回るシーンにしたい」と伝えていました。つまり、観客が想像もしていないような体験を提供したいんです。僕の映画を観ることにはリスクが伴ってほしいし、それも「観たことを後悔した」と言われかねないリスクでないといけません。自分のブランドをそんなふうに作り上げることができれば、新しい作品を発表するたびに話題にしてもらえるはずだから。



『逆転のトライアングル』Fredrik Wenzel © Plattform Produktion


Q:実際の撮影はどんなプロセスで行われたのでしょうか? 非常に大変だったのではないかと思うのですが。


オストルンド:大変でした(笑)。撮影には13日間かかったんです。セットで撮ったので、食堂や廊下、客室などを傾斜可能な回転台の上に建てたんですよ。だからセットを実際に揺らしながら撮ったんですが、あれは完全にカオスでしたね(笑)。僕自身は監督として、常にいろんなものをコントロールしておきたいタイプなんですが、全部が揺れるもんだからまったくコントロールがきかない。ずっとセットの上にいたスタッフも船酔いしてしまって、酔い止めの薬を飲み、酔い止めのリストバンドをしていなければいけない状態でした。


それから、シーン全体を細切れに撮っていく必要があったことも骨が折れました。僕は長回しで撮影することが多いので、普段はあまりたくさんカットをかけないんです。撮り方が限定されることに苛立ちを感じたこともありました。


Q:船酔いに耐えきれず、吐いてしまう人たちが出てきますが……


オストルンド:嘔吐する人の撮り方には3種類あるんです。ひとつは、俳優の口にチューブを入れ、空気を送るポンプを繋いでおく方法。そうするとボタンを押すだけで、俳優たちも知らないタイミングで口から吐瀉物を出してもらえます(笑)。もうひとつは、ポストプロダクション(撮影後作業)の段階でCGを足す方法。そして、最後が実際に吐いてもらう方法です。テーブルのところで一番派手に嘔吐していた、ベラ役のズニー・メレスは自力で吐ける能力の持ち主なんですよ。




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