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『ボーンズ アンド オール』拭いがたい孤独感、思春期のためのR指定映画

© 2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved. 

『ボーンズ アンド オール』拭いがたい孤独感、思春期のためのR指定映画

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※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『ボーンズ アンド オール』あらすじ

生まれながらに人を喰べる衝動を抑えられない18歳の少女マレン。彼女はその謎を解くために顔も知らない母親を探す旅に出て、同じ宿命を背負う青年リーと出会う。初めて自らの存在を無条件で受け入れてくれる相手を見つけ、次第に求めあう二人。だが、彼らの絆は、あまりにも危険だったー。



 あまりにも純粋であるということは、あまりにも脆いということだ。ティモシー・シャラメとルカ・グァダニーノ、『君の名前で僕を呼んで』(17)で日本でもその名前を広く知られたふたりが、『ボーンズ アンド オール』(22)で再びこの主題に挑んだ。もちろん、その手つきを大きく変えながら。


 人を喰べずにはいられない衝動を持つ少女・マレン(テイラー・ラッセル)は、父親とともに住まいを転々としながら生きてきた。しかしある朝、マレンが目覚めると父親の姿がない。“人喰い”である娘との生活に苦しんできた父は、メッセージを吹き込んだカセットテープを残し、マレンのもとを去ったのだ。


 マレンは父の残した手がかりをもとに、幼い頃に自分を捨てた母親を探す旅に出る。その道中、彼女は自分以外には存在しないと考えていた“人喰い”の同族に出会った。マレンと同じく、人を喰べずには生きていけないという秘密に葛藤している少年・リー(ティモシー・シャラメ)だ。旅を続ける中、マレンとリーは少しずつ惹かれ合っていく。



『ボーンズ アンド オール』© 2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.


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翻案の達人、ルカ・グァダニーノの手腕



 いまや名実ともにイタリアの名匠であるグァダニーノは、極めて傑出した翻案の名手である。17歳の女子高生が自身の性経験を赤裸々に記した小説に基づく『メリッサ・P 〜青い蕾〜』(05)、フランス映画『太陽が知っている』(69)のリメイク版『胸騒ぎのシチリア』(15)、アンドレ・アシマンの同名小説を映画化した『君の名前で僕を呼んで』、ダリオ・アルジェントによる伝説のホラー映画を再構築した『サスペリア』(18)……。あの『スカーフェイス』(83)のリメイク企画が控えているのも頷ける。


 本作『ボーンズ アンド オール』も、2015年に作家のカミーユ・デアンジェリスが発表した同名小説の映画化だ。『君の名前で僕を呼んで』はいわゆる“青春小説”だが、『ボーンズ アンド オール』はより青少年に向けられたヤングアダルト小説。これまでのグァダニーノは、原作の核心を的確に掴み取りつつ、大胆なアレンジを施した映像化に取り組んできたが、今回もその例外ではない。脚本は『胸騒ぎのシチリア』『サスペリア』でタッグを組んだデビッド・カイガニックが執筆した。


 1980年代のアメリカを舞台に、マレンとリーは旅をする。それはマレンにとっては母親を探し求める旅であり、リーにとっては父親との過去を振り切る旅だ。ふたりは揃って家族との関係に問題を抱え、人を喰べなければ生きていけないという事実に自らも傷つき、そして実際に人を傷つけながら生きていく。この世界に、果たして彼女たちの居場所はあるのか。





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