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『ボーンズ アンド オール』拭いがたい孤独感、思春期のためのR指定映画

© 2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved. 

『ボーンズ アンド オール』拭いがたい孤独感、思春期のためのR指定映画

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思春期のためのR指定映画



 『ボーンズ アンド オール』の全編を覆っているのは、拭いがたい孤独感だ。家族の中でさえ平穏を叶えられなかったものの、この世界のどこかには自分の居場所があるのではないか、あるはずだ、と考えているマレンやリーは、どうしようもなく他者を求め、そして他者から求められることを願っている。


 このテーマを文字通り体現するマレン役のテイラー・ラッセルは、『WAVES/ウェイブス』(19)で見せた複雑な心理表現を、ホラー&ラブストーリーというジャンルでもいかんなく発揮した。リー役のティモシー・シャラメも、『君の名前で僕を呼んで』とはまったく異なる役どころながら、“はみ出し者”であることを力強く肯定するビジュアルと、しかしあと一歩で壊れてしまいかねない精神のアンバランスを綱渡りで演じてみせる。



『ボーンズ アンド オール』© 2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved. 


 マレンとリーが旅をするアメリカ中西部の風景は、開放感にあふれる一方、地面にたたずむふたりの存在を浮き彫りにして、その孤独感をむしろ際立たせた。弱冠29歳の撮影監督アルセニ・カチャトゥランによる、自然光を活かした臨場感ある撮影は本作のキーとなっている。トレント・レズナー&アッティカス・ロスによる劇伴も、物語に過剰なアクセントをもたらすことなく、彼らの心情にじっと寄り添っているかのようだ。


 「この世界に、こんな自分の居場所はどこにあるのか?」。“人喰い”のメタファーをどのように読み解くにせよ、グァダニーノ&カイガニックが原作から抽出したこのテーマはあまりにも普遍的だ。確かに過激な暴力描写を伴う映画だが、原作のヤングアダルト小説たるゆえんを本作はきちんと継承している。言ってみれば、この映画はまごうことなき“思春期のためのR指定映画”なのだ。叶わないとは承知ながら、できることなら10代の観客にこそ届いてほしい……そんな風にも思える、ある意味では深作欣二監督『バトル・ロワイアル』(00)にも類似性を見出だせる一作である。





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