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「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」岡本昌也、成瀬都香、藤本楓、牧大我 ndjcで学んだこととは【Director’s Interview Vol.285】

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」岡本昌也、成瀬都香、藤本楓、牧大我 ndjcで学んだこととは【Director’s Interview Vol.285】

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プロから学んだもの



Q:研修では講師の皆さんからどのようなアドバイスがあったのでしょうか。


岡本:プロの人たちは実際どうやって映画を作っているのか、今回参加してとても勉強になりました。実際の体験と勉強してきたことが結びつき、どんどん自分の糧になってゆく、その感じが大きかったです。いちばん感動したのは、脚本指導で講師の小川智子さん(脚本家)から教わった内容です。登場人物の感情の導線が一貫していないと、映画になったときに情緒不安定になる。そのことを教えていただきました。僕は人物を描くときに、理由なく行動させたり急に思いを爆発させたりしていて、順序立てて説明をしていなかった。そこを小川さんに、人物の中に入っていく視点と物語全体とのバランスを添削していただきました。これはかなり勉強になりました。


また、編集の段階でも驚くことがありました。プロの方の編集はスムーズすぎてカットが変わっても気づかないんです。自分がぼーっと見ちゃっているのもありますが、でも観客は実際にそういうもの。不自然にシーンが切り替わると、違和感になったり、伝えたいことのノイズになってしまう。今まで普通に観ていた映画も、全て計算されて鮮やかにつながっていたのだと、作り手の目線から思い知らされました。


自分はもうやれることは何もないとそれまで勝手に思い込んでいたのですが、やることはまだまだ無限にあった。今後の映像作りが楽しみになりました。



岡本昌也さん


Q:成瀬さんは映画における「ダレ場」と「間」の違いが印象に残ったとのことでしたが、それは具体的にどのようなことだったのでしょうか。


成瀬:画コンテ・演出指導講師の犬童一心監督と一緒に『ダーティハリー』(71)を観たのですが、本質とは全然関係ないシーンが出てくるんです。でもそこが『ダーティハリー』の魅力で、泥仕事のような大変なこともやっているところがアウトローでいいんだと。「ダレ場」とは、勇気を持って本質と違うことをやることだと教えていただきました。


ただ、私はシーンを作ることは出来るのですが、本筋じゃないところで人物の世界観を作ることがすごく苦手でした。構成から練るタイプなので、情景や世界観についてはそこまで詰めないうちから書き始めてしまう。まさにそこを、脚本指導講師の冨永昌敬監督に「世界観をつくっていくことは、まずディテールを作っていくこと」だと教えてもらいました。例えば、主人公が通うプロレスの道場の表には花輪が置いてある、それでこの道場が新しく移転してきたことがわかるし、そこに書いてある送り主の名前でその団体の関係性もわかってくる。そういったことを教えていただき、すごく勉強になりました。


藤本:私は成瀬さんとは逆で、話の筋や柱を立てるのがすごく苦手でした。なぜ主人公がスタンドインである必要があるのか、そこの理由づけが薄く、横道にそれる遊びの方ばかりが浮かんで来てしまう。物語をちゃんと描けなくてすごく苦労しました。脚本の中で弱い部分を修復するのが大変で、かっちりしてしまうと自分のやりたい空気感が出せないし、物語が弱いと観客に突っ込まれてしまう。実際に映像になってみないとわからないところもあり、とても難しい作業でした。だから脚本指導のときは毎日顔がげっそりしてました(笑)。その時期が一番しんどかったですね。ラストシーン以外は何とか撮影前に出来たのですが、ラストシーンだけは撮影のギリギリまで悩んでいて、撮影直前に差し込み*のような形でやっと確定しました。


*差し込み:撮影期間中に追加されるシーンの脚本


牧:そもそも僕はこれまで映画を1.5本くらいしか作ってなくて、0.5は未完のまま終わってしまっていました。また、これまでは友達とツーカーの関係で作ってきたので、感覚的な言葉を使って会話が通じたし、それで良かった。それがワークショップの初日に、撮影機材講師の早坂伸さん(キャメラマン)から「全カット言語化できるくらいの目的を持って撮るべきだ」と言われてしまったんです。やはり監督たるもの、ちゃんと言語化して進めなくてはいけないのだと反省しました。


コミュニケーションの部分でも自分の努力が必要だし、書いている脚本も他人に伝えるために存在するもの。講師をしてくださった犬童監督も冨永監督もそこがとても上手で、監督としてしっかり伝えることができる人なのだなと、その立ち姿もすごく学びになりました。





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