立ちはだかる現実
Q:ワークショップを経て実際の撮影に入っていくわけですが、プロダクションやスタッフと一緒に作るにあたり、監督としてやりたいことをどのように伝えて進めていきましたか?特に牧さんの『デブリーズ』は、造形のイメージなどどのように伝達されたのでしょうか。
牧:衣装に関してはちょっと特殊な動き方をしていて、古着をリメイクするアーティストの友達3人にお願いしました。最初からデザインを決めずに、ゴミを集めてきてその組み合わせでどういうものができるのだろうかと。彼らのクリエイティビティを大事にしたかったので、わりと自由にやってもらいました。ただ、リファレンスとして「シャルル・フレジェ」という民族衣装を撮っている写真家の写真集を見せて、これをゴミでやってくれと伝えておきました。
Q:撮影や編集などプロの方々との作業はいかがでしたか。
牧:そうですね。そこがいちばん難しかったです。撮影の山本英夫さんはとても優しい方で、いろいろと聞いてきてくださったのですが、僕自身何が正しいのかの判断もつかず100%の答えはまだ持ってない状態でした。全て出しきれなかった部分はあるかもしれませんね。そもそも最初は自分で「カット」すら言えませんでしたから…。
牧大我さん
藤本:私はTOHOスタジオのプロデューサーの方と顔合わせをしたその日に、キャスティングの提案をしていただいたんです。まずそれにすごく感動しました。「あ、もう始まってるんだ」という気にさせられ、一気に映画が形になっていくようなワクワク感がありました。
実はndjcに脚本を送ったときから、主演は宮田佳典さんで勝手に当て書きをしていて、苗字一文字だけ変えて柳田佳典という主人公にしていました。ぜひ彼で撮りたいと思っていたんです。他にも魅力的な役者さんを提案していただいたのですが、結果全員私の第一希望の方にお願いすることができました。それもプロダクションやプロデューサーの方のおかげです。本当にTOHOスタジオさんでよかったと思います。
Q:ギリギリまでラストシーンが決まらなかったそうですが、撮影はいかがでしたか。
藤本:ラストシーンのセリフと演出を悩んでいました。ラストシーンには屋外プールが出てきて、どうしてもそこに主人公を浸からせたかった。ただし撮影は12月の上旬だったので、真冬のプールに役者さんを何時間も入れさせられないと、プロデューサーの判断もあり脚本の変更を相談されました。私としてはそこにこだわりがあったので、自分で調べて西伊豆の方にお湯が入るプールを見つけて、それをプロデューサーに提案してやっと了承をいただきました。
Q:現実と折り合いをつけなければいけないことも、いい経験でしたね。
藤本:伊豆のロケ場所は、東京から片道4時間くらいかかるのですが、その翌日にまだ別の撮影があるから、絶対に終電で帰る必要がありました。また時期的にも陽が沈んだあとは1〜2時間くらいしか撮れない状況でした。それでも譲れない部分はあったので、他の部分などを色々調整・変更して撮らせてもらいました。