大切なのは俳優の演技
Q:こうした大作映画を作るには、「人間を描く」ことはもちろん、ストーリーテリングから撮影、美術、そしてVFXまで、演出する範囲が多岐に渡ります。どのようにしてプロジェクトを牽引されたのでしょうか?
ブルブロン:今回は、昔から良く知っている人たちと一緒に仕事ができて、いいチームに恵まれたのが大きいですね。プロジェクトを牽引するには、信頼出来るチームと仕事をするのが大切です。そして、彼らのエネルギーを自分の思い描く方向に導いていくのが監督の仕事なのです。
Q:撮影現場でのプライオリティとして、何に一番気をつけていますか。
ブルブロン:現場では全てに気を配らなければいけませんが、プライオリティを一つ選ぶとしたら、やはり俳優の演技ですね。ちゃんと演技ができているか、感情がのっているか、そこに目も耳も集中させています。どんなにいいCGを使っても、そこに存在する人間のエモーションがきちんと出ないと映画は成立しない。こういった大作の場合、あらゆる要素を見てそのバランスに気をつける必要がありますが、それでも一番大切なのは俳優の演技を見ることですね。
『エッフェル塔~創造者の愛~』© 2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films
Q:あまりリハーサルを行わないそうですが、基本は俳優に委ねているのでしょうか。
ブルブロン:そうですね。俳優を信用していますし、リハーサルを行わないことは自分のスタイルなんです。この方法に疑問を抱く俳優もいますが、リハーサルではあえて作り込まず、不安定な部分を残して撮影に臨んだ方が良い。会議室のような場所で演技の練習をするよりも、現場における自然なマジックを大事にしたいのです。ただし、現場で脚本の変更をする時間はないので、疑問や変更したい点を洗い出すためにも、事前に読み合わせは行っています。
Q:今回は『天国の門』(80)や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)、『ファースト・マン』(18)のような作品を参考にされたそうですが、それらにも引けを取らない大作に仕上がっています。フランスではこういった大作映画はそれほど多くないと思いますが、国内での反応はいかがでしたか?
ブルブロン:フランスでは入場者数150万人を突破して、多くの人に迎え入れてもらえました。パンデミック後、映画館入場に陰性証明書が必要だった状況を考えると、すごくいい数字でした。観てくれた方は、エピックな叙事詩と個人のラブストーリーが絡み合う部分を気に入ってくれたのだと思います。
エッフェル塔はフランスの重要なモニュメントであると同時に、世界の多くの方が知っている建造物。こうして他の国の皆さんにもこの映画を観ていただけることになって、とても嬉しいですね。
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監督:マルタン・ブルブロン
1979年、フランス生まれ。父はベルトラン・タヴェルニエ監督作品を数多く手掛けたプロデューサーのフレデリック・ブルブロン。短編映画『Sale hasard』(04)で監督デビュー。コメディ映画『Papa ou maman』(15)が大ヒットとなり、アルプ・デュエズ国際コメディ映画祭で最優秀作品賞にあたる観客賞を受賞、続編『Papa ou maman 2』(16)も監督する。これらの作品と本作の手腕が高く評価され、アレクサンドル・デュマの「三銃士」の映画化で、『Les trois mousquetaires: D'Artagnan(原題)』(23)と『Les trois mousquetaires: Milady(原題)』(23)の二部作となる超大作の監督に抜擢される。出演はフランソワ・シビル、ヴァンサン・カッセル、ロマン・デュリスらで、2023年ヨーロッパ最大の話題作として注目されている。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『エッフェル塔~創造者の愛~』
新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国公開中
配給:キノフィルムズ
© 2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films
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