デビュー42周年を迎えたパンクバンド“亜無亜危異”のギタリスト、藤沼伸一が自身のすべてをモチーフにしたという映画『GOLDFISH』。人生の折り返し地点を迎えたとき、自分の人生を問い直すことでアイデンティティが揺れ、深刻な心の葛藤が起きる「ミッドライフクライシス」など、多くのミュージシャンやアーティストに襲いかかる苦悩を描き出す。還暦を超えた藤沼伸一だが、本作が監督初挑戦にも関わらず、自身が歩んできた道のりを熱いパッションで映画化してみせた。
藤沼監督自身を投影したイチを演じるのは永瀬正敏。同じバンドメンバーで自身との葛藤に悩むハルを北村有起哉が演じている。これまで共演作は多いものの同じシーンは意外と少なかったという二人。本作では、昔馴染みのバンドメンバーならではの距離感を絶妙に表現している。二人はいかにしてパンクバンド“ガンズ”になったのか。話を伺った。
『GOLDFISH』あらすじ
80年代に社会現象を起こしたパンクバンド「ガンズ」。 人気絶頂の中、メンバーのハル (山岸健太)が傷害事件を起こして活動休止となる。 そんな彼らが、30年後にリーダーのアニマル (渋川清彦)の情けなくも不純な動機をきっかけに、イチ(永瀬正敏)が中心となり再結成へと動き出す。しかし、いざリハーサルを始めると、バンドとしての思考や成長のズレが顕になっていく。躊躇いながらも、音楽に居場所を求めようと参加を決めたハル(北村有起哉)だったが、 空白期間を埋めようとするメンバーたちの音も不協和音にしかならず、仲間の成長に追い付けない焦りは徐々に自分自身を追い詰めていった。そして、以前のように酒と女に漏れていったハルの視線の先に見えてきたものは―。
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居心地がよかった「ガンズ」メンバー
Q:たくさんの映画に出ているお二人ですが、共演は意外な感じがしました。
永瀬:同じシーンは無くても、何度かご一緒してますよね。
北村:最近では『百花』(22)、熊井啓監督の『海は見ていた』(02)もそうですね。
永瀬:そうだそうだ。どちらも出てるのは全然違うシーン。一緒のシーンがあったのはマイクぐらいかな。
Q:TVドラマ版の「私立探偵 濱マイク」(02 第10話「1分間700円」)ですね。
永瀬:もう20年前ですね。
北村:あのときは3〜4時間かけて不動明王を背中に彫ってもらいました。そしてメイクに2時間。そして撮影が10分(笑)。
永瀬:それはそれは、失礼しました(笑)。
北村:いえいえ、もったいなかったので不動明王はそのまましばらく背負ってました(笑)。
(左から)永瀬正敏、北村有起哉
Q:そこからの共演だと感慨深いものがあったのではないでしょうか。
北村:僕はありましたね。この渋いメンバーに入れてもらえたのも嬉しかった。チラシを見て「渋い!怒髪天も出てるし!」みたいに思ってくれるといいですね(笑)。
Q:映画での「ガンズ」のメンバーはとても仲良く見えました。演じた皆さん(永瀬正敏、北村有起哉、渋川清彦、増子直純、松林慎司)は実際には年の差がありますが、現場ではいかがでしたか?
北村:撮影はすごく楽しかったです。増子さんがとにかく面白くていろんなことをベラベラ喋ってくれる(笑)。「亜無亜危異」との思い出話も聞けました。普段の現場の空気とは違う感じもして、とても居心地が良かったですね。
永瀬:居心地は良かったですよね。KEE(渋川清彦)くんが一言発する度におかしくてしょうがなかった(笑)。僕は笑っちゃいけない役ですが、笑いを堪えるのが大変でした。「ガンズ」は映画のための急造チームでしたが、昔からの仲間のような感じがしてすんなり入っていけました。