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『サイド バイ サイド 隣にいる人』伊藤ちひろ監督 この映画自体がコミュニケーション【Director’s Interview Vol.305】

『サイド バイ サイド 隣にいる人』伊藤ちひろ監督 この映画自体がコミュニケーション【Director’s Interview Vol.305】

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オリジナル脚本で気づく自分の本質



Q:これまで脚色の作業も多かったと思いますが、オリジナル脚本との作業ではどんな違いを感じますか。


伊藤:脚本家として脚色の作業をやっていたときは、原作の魅力とそのファンの気持ちを大切にします。そして、多くの人に理解してもらえるよう分かりやすさを求められる仕事が多かった。そういった仕事をしてきたにもかかわらず、こうして自分の中から出てくるものを純粋に作ってみると、“分かる”“分からない”が論点になってしまうような映画になった。そこは自分でも驚いています。これは作ってみて分かったことです。だけど、わたしにとって大切なのは、分かる分からないの観点よりも、観てくださった方が、たとえば絵画を観る時と同じように、その人なりの解釈で自分のものにしていけるような、正解を求めない作品でいたいということ。自分の本質的な部分はそういうところにあるのかと気づきました。


だけど、コミュニケーションを取りたいところから始まった2作でしたが、次はまた違うものに挑戦して、お客さんの違う顔を見てみたい。私は100分以内の映画が好きなので、自分は短い映画を作る人間だと思っていたのですが、無我夢中で作っていたら意外と長くなってしまった。だから今度は短くテンポ良く、スピードで跳ね返ってくるような作品を作りたいですね。



『サイド バイ サイド 隣にいる人』©2023『サイド バイ サイド』製作委員会


Q:影響を受けた映画監督や映画作品を教えてください。


伊藤:映画界に入りたいと思わせてくれたのは、レオス・カラックス監督と鈴木清順監督です。でもいざ自分が監督するにあたっては、二人の作品はあえて観直しませんでした。自分から純粋に生まれてくるものを見つめたかったので、好きな映画はなるべく観ないようにしていたのですが、それでも完成した映画を観ると彼らの作品が私の血肉になっていたことを感じました。清順監督もカラックス監督も余白があるからこそ、いっぱい想像を伸ばしてくれて新たな自分を発見させてくれた部分があった。それが私にとっての映画体験。そこはすごく影響を受けていると思います。




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監督・脚本・原案:伊藤ちひろ

『Seventh Anniversary』(03)で脚本デビュー。その後、『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)の脚本に大抜擢され、『春の雪』(05)、『クローズド・ノート』(07)など行定勲とタッグを組んでヒット作を発表する。その他の作品に、ヴェネチア国際映画祭コンペディションに選出された『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(08/押井守監督)、『今度は愛妻家』(10/行定勲監督)、『真夜中の五分前』(14/行定勲監督)など。活躍は映画にとどまらず、神奈川県立芸術劇場(KAAT)のこけら落とし作品「金閣寺」(宮本亜門演出)の上演台本を手掛ける。近年では堀泉杏名義で『ナラタージュ』(17/行定勲監督)、『窮鼠はチーズの夢を見る』(20/行定勲監督)などの脚本を手掛ける。劇場映画初監督作品となる『ひとりぼっちじゃない』が現在公開中。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『サイド バイ サイド 隣にいる人』

4月14日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

配給:ハピネットファントム・スタジオ 

©2023『サイド バイ サイド』製作委員会

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