編集して初めて短編じゃないと気づいた
Q:さのさんのカメラも素晴らしかったです。河野監督は出演もされていますが、撮影はさのさんにお任せだったのでしょうか。
河野:カメラワークは僕が事前に決めて、リハーサルの段階で動きは全部指示していました。そうやってある程度動きを固めた上で本番に臨みました。ただどうしても任せないといけない部分もあったので、そこはさのさんにお願いして撮ってもらいました。
Q:カメラワークは荒削りな部分もありますが、一方で緻密に計算されている印象もあります。すごいものが撮れている感じがしました。ほぼ全てのカットが長回しで河野監督自身も出演しているシーンも多いですが、テイクはどのように判断されたのでしょうか。
河野:テイクの判断は感覚的なものもありますが、OKの基準はリハーサルの段階である程度決めていて、そこを満たすか満たさないか、それ以上ものが出るかどうかでした。ほぼ全てゲリラ撮影だったので何度も撮影できないシーンが多い。しかもモニターチェックするだけで20分くらいはかかる。正直もう一度やりたいなと思っても出来ないことも多々ありました。最後の樹海のシーンは撮影出来たとしても2回が限界かなと思っていましたが、1回目でリハーサル以上のものが撮れたので、そこは一発でOKを出しました。
『J005311』© 2022『J005311』製作委員会(キングレコード、PFF)
Q:編集は脚本どおりにつなげたのでしょうか。また、テイクの選択や尺はどのようにして編集を進めたのでしょうか
河野:もともと30分くらいの短編のつもりで脚本を書いて撮影したのですが、編集して初めてこれは短編じゃないと気づきました。最初につないだら110分くらいあって、そこから削って90分ほどに収めました。何度も同じ映像を見てテイクを比べていると正常な判断ができなくなってくる。自分を信じて自分がいいと思ったテイクを選びつつ、「長くなってもいいかな」というくらいの気持ちでやっていました。
Q:河野監督と野村さんは、スクリーンの中でそのまま山本と神崎として存在していました。演技のアプローチはどのように方向性を決め、演出し撮影されたのでしょうか。
河野:最初に二人でそれぞれの人物像を話し合ってバックグラウンドを決めました。まずは歩き方から始めようと、お互いに撮影しながら代々木公園を3時間ぐらいずっと歩いてました。
野村:どういう歩き方が神崎なのかを二人で探ってましたね。自分の普段の歩き方と結構違うので大変でした。
Q:歩き方など河野監督から細かく演出・指示されたのでしょうか。
河野:基本的には野村に自由にやらせつつ、違うと思ったら指摘しました。なるべく野村が動きやすいように、正直に演技しやすいようにと考えていました。
Q:野村さんが普段行っている撮影現場とはまた違ったと思いますが、比べてみてどうでしたか。
野村:これは自分たちで出資してやっていて、今後は作れないのではないかという思いも背負っていました。この一作で映画とは関われなくなるかもしれない。全てを注ぎ、撮りきることだけを考えてやっていました。そこが全然違いましたね。