心臓を射抜かれたセリフとは
Q:これまではドラマで制作されて来ましたが、今回は2時間の映画です。物語の構成や展開で意識されたことはありますか。
渡辺:実はあまり無いんです。そもそも小林さんの書かれた脚本が変則的な起承転結のような形で各パートがうまくかみ合っていて、違った要素のブロックが四つ重なっていく構成になっている。ちょうど2〜30分の短編がうまく連動する感じで作れたと思います。
Q:技術的な観点で、撮影や編集、音響など、映画として意識された点はありますか。
渡辺:音響はこれから作業をする予定ですが*、ドラマのときよりも更に増幅したものをお届けできると思います。映像のテイストやルックはドラマのときと基本的に何も変えておらず、スタッフもほぼ一緒です。
*) 3月上旬取材時点
Q:フランスでのロケはいかがでしたか。
渡辺:スタッフの3分の2は現地の方だったのですが、皆さん参加のモチベーションが高かったですね。日本のアニメや特撮などを見て育った方も多かったです。現地の役者さんにも何人か出ていただきましたが、中にはジョジョの大ファンの方もいて、我々の仕事に敬意を払ってくださって、とても楽しんで演じてもらえました。1週間ほどの撮影でしたが、もう1年ぐらい一緒に仕事をしているんじゃないかと思うくらい、チームワークが出来ていました。
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
Q:では最後に、「ジョジョの奇妙な冒険」「岸辺露伴は動かない」など、シリーズの中で最も好きなエピソードがあれば教えてください。
渡辺:ジョジョの連載が始まったのは中学生の頃で、もう40年近いお付き合いをさせていただいていますが、この業界に入りたての頃に読んだ「ジャンケン小僧」のエピソードに衝撃を受けました。そのとき初めて「映像化したい!」と思ったんです。このエピソードで書かれている言葉のやり取りは、舞台で二人芝居に出来るくらいの面白さがあって、ジャンケンを5回するだけで連載が6話も続いちゃう。そこにも驚愕しましたし、「ジャンケンは確率ではない、勝ちたいと思う心の力だ!」というそのセリフに心臓を射抜かれました。ジャンケンだけで一つのエピソードを作ってしまう荒木先生の発想はすごいと思いました。「ジャンケン小僧」のエピソードは昨年映像化させていただきましたが、本当に幸せでしたね。
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監督:渡辺一貴
1969年生まれ。1991年にNHKに入局後、数多くのテレビドラマ作品を手掛ける。現在はNHKエンタープライズに所属。主な演出作品に「監査法人」(08)、「リミット -刑事の現場2-」(09)、「龍馬伝」(10)、「平清盛」(12)、「お葬式で会いましょう」(14)、「まれ」(15)、「おんな城主 直虎」(17)、「浮世の画家」(19)、「70才、初めて産みますセブンティウイザン。」(20)、「おもひでぽろぽろ」(21)、「雪国-SNOW COUNTRY-」(22)、「岸辺露伴は動かない」(20-22)などがある。本作で初めて劇場公開映画の監督を務める。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
5月26日(金)ロードショー
配給:アスミック・エース
© 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社