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  3. 『ゾッキ』監督・竹中直人×原作・大橋裕之 異色の原作と3人の監督の世界は、映画内でいかにして融合したか【Director's Interview Vol.113】
『ゾッキ』監督・竹中直人×原作・大橋裕之 異色の原作と3人の監督の世界は、映画内でいかにして融合したか【Director's Interview Vol.113】

『ゾッキ』監督・竹中直人×原作・大橋裕之 異色の原作と3人の監督の世界は、映画内でいかにして融合したか【Director's Interview Vol.113】

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孤高の漫画家として注目を浴び続ける大橋裕之。その最初期の作品群を収録した「ゾッキA」「ゾッキB」を実写映画化すると聞いた時は驚いた。大橋作品は唯一無二とも言える世界観を備えているが故に捉えどころがなく、読む者の月並みの解釈など軽く超越してしまう。しかもその短編は作品ごとに長さもばらばら。それをどのように映画化するのか全く想像がつかなかった。


完成した映画を見て驚いた。全く関連のないはずの作品が、なんと一本のストーリーとしてまとめあげられていたのだ。竹中直人、山田孝之、齊藤工という才能豊かな3人の監督が集結することで、実現した本作。そのきっかけは竹中直人が偶然、大橋作品に出会ったことだったという。


Index


楽屋で原作に出会って感動!怒涛の勢いで映画化



Q:全く関連のない短編作品を一本のつながったストーリーにする。これは竹中監督のアイデアですか?


竹中:脚本家の倉持裕さんからの提案です。《ゾッキ》はショートストーリーだったので最初はオムニバス映画として考えていました。


3人の監督によるオムニバス映画《ゾッキ》。そのイメージで(山田)孝之と(齊藤)工に声をかけました。そして《ゾッキ》の初打ち合わせの時、倉持さんから「オムニバスではなく、一つの物語につなげた方が面白いのではないでしょうか…」と提案されたんです。


Q:大橋先生は、ご自身の短編作品が一本につながった映画を見ていかがでしたか?


大橋:最初に見たときは、やっぱり自分の短編が一つのストーリーでつながっている事を冷静に見られなかったですね。もちろん一つ一つのシーンは面白かったんですけど、何度か見ないと自然に見られませんでした。


何度目かの鑑賞でやっと自然に見られて。こんなにスムーズにいろんな所がつながってるんだと、すごく面白いなって思えた感じですね。


Q:竹中監督は、たまたま楽屋にあった「ゾッキA」「ゾッキB」を読んで、映画化したいと思ったそうですね。


竹中:はい!忘れもしない2018年の5月、日比谷のシアタークリエで、倉持裕、作・演出の舞台をやっていた時です。ゲストでお呼びした前野朋哉くんが、僕の前の楽屋だったので、よくちょっかいを出しに行ってたんです。暖簾の隙間から前野が気づくまでじーっと見ていたりね(笑)。


ある日、彼前野の楽屋の冷蔵庫の上に「ゾッキA」「ゾッキB」が置いてあったんです。「何これ?ちょっと貸して!」と楽屋で読んだら、もう本当に感動して「絶対、映画にしたい!」と思ったんです。そして楽屋通路に佇んでいた倉持さんに「倉持さん!この作品《ゾッキ》の脚本を書いてください!」とお願いしました。そして前野には「大橋さんを!大橋裕之さんをこの俺に紹介してくれ!!」と頼み、そこからどんどん突き進んでいきました。



『ゾッキ』監督・企画:竹中直人


Q:すごい勢いですね。


竹中:はい!必死でしたね。《ゾッキ》を絶対に映画にしたい!」って。


Q:竹中監督が共同監督に山田さんと齊藤さんを選んだ理由は何だったんですか?


竹中:直感です。理由はないですね!絶対この2人だと思いました。


Q:役者としてだけでなく、監督としても優秀だろう、と。


竹中:そんな偉そうなことは思いませんが、工とは映画で共演する機会もあり、年に一度は会って食事をしたり、映画の話などをしていたんです。でも孝之とは15年以上会っていなかった。それで共通の友人である(安藤)政信に「孝之を呼んでくれないか!」とお願いしました。


音楽も最初からCharaだと決めていましたね。皆さんを一気に集めて《ゾッキ》の打ち合わせをしました。


Q:かなり直感的に決められたんですね。


竹中:僕が監督をする時はいつもそうです。初監督の『無能の人』(91)も「つげ義春作品を撮りたい、音楽は ゴンチチで!」と。


2本目の監督作『119』(94)の発想となったのは北海道の小樽で旧式の消防自動車が走っているのを見たのがきっかけで、「火事の起こらない街の消防署の話を作ろう!音楽は(忌野)清志郎さんだっ!」と動き出しました。3本目の『東京日和』(97)も、荒木経惟さんの本を代々木上原の本屋さんで手に取った瞬間から、「これを映画にしたい!音楽は大貫妙子さんだ!」って感じですね。


全てその場で閃いた直感的なものです。




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