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『苦い涙』フランソワ・オゾン監督 敬愛するファスビンダーへの挑戦【Director’s Interview Vol.318】

© 2022 FOZ - France 2 CINEMA - PLAYTIME PRODUCTION ©Carole BETHUEL_Foz

『苦い涙』フランソワ・オゾン監督 敬愛するファスビンダーへの挑戦【Director’s Interview Vol.318】

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イザベル・アジャーニはストラディバリウス



Q:主人公たちを男にするというアイデアと、脚本のプロセスについて教えて下さい。


オゾン:性別を変化させたのは、自分の方に近づけて自分の経験を生かせるようにしたかったから。個人的な要素をストーリーに入れ込みたかった。シドニーのキャラクターはオリジナルではあまり重要じゃないのですが、もっと深めたいと思った。オリジナルのファッション界から映画界に話しを移す上で、往年のスターのような存在にしようと思った。アジャーニが脇役にもかかわらず引き受けてくれて、本当に嬉しかったです。彼女は映画のビジョンと、セリフを気に入ってくれました。僕らはこのディーバのようなキャラクターを一緒に創造することを楽しみました。マレーネ・ディートリヒやエリザベス・テイラーのような70年代のスターにインスパイアされながら。彼女は情熱的なキャラクターが好きなんです。それにユーモアがあって、自分のイメージを遊ぶことも楽しんでくれました。彼女は楽器で言えばストラディバリウスですよ。


Q:彼女も『ザ・ドライバー』(78)などでハリウッドでも成功しましたから、シドニーのキャラクターに反映されているわけですか。


オゾン:目配せはあります。でも彼女に近いというよりは、いろいろな女優たちのミックスのようなキャラクターです。


Q:彼女とドゥニ・メノーシェは、脚本のときから想定していたのですか。


オゾン:ドゥニは最初から想定していました。彼は風貌がファスビンダーに似ているから。アジャーニは書いている途中から浮かびました。でもドゥニは正直、受けてくれるかどうかわからなかった。脚本を気に入ってくれたけれど、恐れも抱いていました。内容というよりは、セリフの多さに。彼は演劇をしたことがないので、自信を持ってもらうためにたくさん話し合いをしました。



『苦い涙』© 2022 FOZ - France 2 CINEMA - PLAYTIME PRODUCTION ©Carole BETHUEL_Foz


Q:オリジナル作品に出ていたハンナ・シグラも最初から考えていたのですか。


オゾン:もちろんです。彼女が歌うのをカメラに収めるのは喜びでした。彼女はファスビンダーの母親のことをとてもよく知っていたので、撮影中いろいろなことを聞くことができました。ここでは言えませんが(笑)。彼女はヒューマニティ溢れる、優しい人です。


Q:彼女に最初にリメイクのアイデアを伝えたときは、どんな反応でしたか。


オゾン:なんてアイデアなの、と驚かれました(笑)。でも彼女に脚本を送って、どこか変えた方がいいと思うかと尋ねたら、同じ作品ではないのだから、その必要はないと言ってくれました。


Q:ピーターを誘惑するアミール役のハリル・ガルビアの選択については、どんなところが魅力的でしたか。


オゾン:最初の案では、アミール役はそんなに若い男子の設定ではなかったのです。というのもファスビンダーの愛人はいつも25歳ぐらいから30代だったから。それで、それぐらいの俳優たちにたくさん会ったのですが、みんな役を怖がった。セクシュアルなシーンがというより、挑発的なセリフを懸念して、役者としてのイメージに傷がつくことを恐れたのです。それでキャスティングディレクターが、もう少し若い世代ならもっとオープンマインドではないかと言うので、若い俳優を探すことにしたのです。ベンサレムは僕が会ったときに19歳でしたが、とてもイノセントな面と、屈折した面を演じることができた。曖昧さを保つことができて、なおかつ美しい。ドゥニと会ったときにもウマが合うと感じたので、演じてもらうことになりました。


Q:秘書カール役のステファン・クレポンもとてもいい味を出していますね。


オゾン:彼のことは前から知っていました。というのも、彼は僕が『Summer of 85』(20)で一緒に仕事をしたバンジャマン・ボワザンのルームメイトだったので、家に遊びに行ったときに会ったのです。彼には不思議な雰囲気があります。彼ならマゾシストで屈折した男が似合うだろうと思いました。実際オーディションで彼は素晴らしかった。セリフに頼らず眼差しで多くの感情を表現することができ、とても強い存在感を放っていました。




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監督・脚本:フランソワ・オゾン

1967年11月15日、フランスのパリ生まれ。93年にパリ第一大学の映画コースを卒業。96年、『サマードレス』でロカルノ国際映画祭短編セクション・グランプリを受賞。短編王の名をほしいままにした後、98年、長編映画デビュー作『ホームドラマ』がカンヌ国際映画祭批評家週間で注目される。2000年に、ファスビンダーの戯曲の映画化『焼け石に水』でベルリン国際映画祭テディ賞を受賞。以降、べルリン、カンヌ、ヴェネチアの世界三大映画祭の常連となる。『まぼろし』(00)、『8人の女たち』(02)、『危険なプロット』(12)、『婚約者の友人』(16)、『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(18)、『Summer of 85』(20)でセザール賞監督賞にノミネートされている。また、オゾン初の衝撃の実話をもとにした社会派ドラマ『グレース・オブ・ ゴッド 告発の時』は、ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞、現在のフランス映画界を牽引する巨匠として世界からも認められる。21年、ソフィー・マルソーを主演に迎え、安楽死をテーマに『すべてうまくいきますように』を発表。最新作、裁判サスペンス“Mon crime”(23)がフランスで公開され話題となったばかり。



取材・文:佐藤久理子

パリ在住、ジャーナリスト、批評家。国際映画祭のリポート、映画人のインタビューをメディアに執筆。著書に『映画で歩くパリ』。フランス映画祭の作品選定アドバイザーを務める。





『苦い涙』

6月2日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

配給:セテラ・インターナショナル

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