個性を前面に押し出せた
Q:全てのエピソードが振り切った内容になっていますが、最終的に全話つなげてから各話のテンションなど調整されたところはあったのでしょうか。
内田:全くしてないですね。確かに、1話だけ飛び出てたり引っ込んでたりするのではないかと多少は心配だったのですが、全くそんなことはなかったです。
片山:統一感を持たせようと話し合ったこともないですね。
内田:お互いの現場はほぼ見てないので、完成して「おお、こういう感じなんだぁ」と。
Q:全体的なトーンなども事前には計算されていなかったと。
内田:全然ないです(笑)。バラバラでもそれはそれで良いかと。今は計算しすぎですよね。皆で集まって皆で理屈を考えて、キャラクター性を考えて…。計算からはみ出たところに面白さがあると思うのですが、最近そういうのはないですよね。
片山監督の個性が全面に出て、僕のやりたいことが出てと、個性って重要だと思うんです。最近はそれを抑えなきゃいけない作業が多い気がします。今回は逆に、個性を全面に押し出していけた。通常の逆の形態をやりたかったので、そこはうまく出来たかなと思います。
片山:今は自粛することもあったりして、表現的にセンシティブになりがちですね。
『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』©2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会
Q:それは意外でした。お二人の個性を踏まえた上で一緒にやりましょうという話があるのだと思っていました。
内田:個性を抑えることは僕らに限らず誰にでもあります。ある程度の規模の作品になってくると絶対そういうのが出てくる。好き勝手にやったら、それはそれで問題だろうね。個の作家性よりも、世間が求めるものに寄っていっているので、その傾向はどんどん強くなるんじゃないかな。日本では5〜6年前くらいにインディーズ映画のブームがあって、あの頃はまだそういう場があったと思いますが…、今はないでしょうね。
Q:たった5〜6年で、全然変わってきていると。
内田:コロナも大きかったでしょうね。また、東京国際映画祭のジャパンスプラッシュ部門が無くなったこともあると思います。僕も彼もそこの出身なんで、その場所がもう無いわけですから、状況は全然違いますよね。