海外での実績は将来につながる
Q:“世界三大ファンタスティック映画祭(シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、ポルト映画祭(ファンタスポルト))”制覇を狙っていて、実際にブリュッセルとポルトでは受賞されたそうですが、現地の反応はいかがでしたか。
内田:予想外にめちゃめちゃ受けてました(笑)。外国ではファンタはまだまだ健在なんだなと。また、日本の社会問題も捉えてくれていたように思います。例えばAVのシーンや風俗産業のシーンは外国にはあまり無いものなので、若い人が直面している日本特有の問題を感じてくれたんじゃないかな。『パラサイト 半地下の家族』(19)のように、ファンタっぽい描写と社会問題をミックスさせる映画は最近多いですからね。
片山監督は映画祭には行けなかったのですが、7月には韓国に行く予定なんです。向こうの反応をぜひ見てきてもらいたいですね。
『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』©2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会
片山:韓国の映画祭では割と厳しい質問が飛んでくるんです。一般の観客なのに結構突っ込んだ質問が多い。今回の映画はどういう風に突っ込まれるのかなと(笑)。いろいろ言われたとしても、こういう映画なので大丈夫ですけどね。楽しんでもらえるといいですね。
内田:試写会では泣く人が結構いるんですよ。それはなぜなのか僕らにもよくわからないんですが…。歌舞伎町自体が悲しい街ではありますからね。上辺だけはハッピーですが...。
Q:こういった“偏った“ジャンル映画を日本で手がける機会はなかなか無いと思いますが、今回の手応えや、将来性など感じたことがあれば教えてください。
片山:この作品に限らず、荒唐無稽なジャンル映画みたいなものが日本でも生まれてくるといいですね。海外の人が観て理解できたというのは将来性がありますよね。女子高生の恋愛モノをずっとやっていても、なかなか世界には持っていきづらいと思いますから。
内田:僕はジャンル映画をもっとやっていきたいと思っています。最近は感動モノや学園モノばっかりなので(笑)。そういうものはテレビドラマでも観れる。映画館では、お金がかかったブッ飛んでるジャンル映画を観た方が面白い。次は、ちゃんとお金を掛けた宇宙人が出てくる映画を撮りたいと思います(笑)。
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監督・脚本:内田英治
1971年生まれ。ブラジル・リオデジャネイロ出身。TV番組の制作や「週刊プレイボーイ」記者を経て、99年にドラマ「教習所物語」で脚本家デビュー。その後、04年『ガチャポン!』で映画監督デビュー。14年公開の『グレイトフルデッド』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」ほか、「ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭」など、国内外の映画祭で高く評価される。翌15年に手掛けたオムニバス『家族ごっこ』の一編「高橋ごっこ」で伊藤沙莉と出会い、彼女の主演作『獣道』(17年)を監督するほか、『タイトル、拒絶』(20年)ではプロデュースを務めた。脚本・監督も手がけたドラマ「全裸監督」(19年)を経て、『ミッドナイトスワン』(20年)を発表し、「日本アカデミー賞最優秀作品」を受賞。22年に公開された『異動辞令は音楽隊!』は「ニューヨーク・アジアン映画祭」でワールドプレミア上映されている。今後の公開待機作に『マッチング』(23年公開予定)がある。
監督・脚本:片山慎三
1981年2月7日生まれ。大阪府出身。中村幻児監督主催の映像塾を卒業後、『TOKYO!』(08年)、『母なる証明』(09年)といったポン・ジュノ監督作やドラマ「全裸監督」、また竹中直人監督作や山下敦弘監督作などで助監督を務める。18年、自費で製作した『岬の兄妹』で長編映画監督デビューし、全国6館から50館以上へ拡大公開。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018国内コンペティション長編部門優秀作品賞・観客賞」のほか、「第41回ヨコハマ映画祭新人監督賞」「第29回日本映画批評家大賞新人監督賞」などを受賞する。『そこにいた男』(20年)や竹野内豊主演によるWOWOWドラマ「さまよう刃」(21年)などを手掛けた後、22年に商業映画デビュー作『さがす』を監督。「日本映画監督協会新人賞」のほか、「第47回報知映画賞監督賞」「第14回TAMA映画賞 最優秀新進監督賞」を受賞した。また、ドラマ「ガンニバル」(22~23年)でもメイン監督を務めている。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』
6月30日テアトル新宿他全国ロードショー
配給:東映ビデオ
©2023「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」製作委員会