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『君は放課後インソムニア』池田千尋監督 フィクションとリアリティのバランスをどこに置くか【Director’s Interview Vol.327】

『君は放課後インソムニア』池田千尋監督 フィクションとリアリティのバランスをどこに置くか【Director’s Interview Vol.327】

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大事なのは、何を撮りたいか



Q:天文台にある部室も、原作を完璧に再現しているようでしたが、あの部分はセットで作られたのでしょうか。


池田:あの天文台はセットではなく本当に学校内にあるんです!ただ、中はとても狭くてエアコンも無かったので、真夏の撮影はサウナのようでした(笑)。別の場所にもう少し広い天文台を見つけたので、そこで撮影する案もあったのですが、カメラマンの花村さんが「大丈夫、ここで撮れるよ」と言ってくれた。学校の天文台で撮影した方が原作にある画を作れる。皆、原作を大事にしながら撮影を進めてくれたんです。



『君は放課後インソムニア』©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会


Q:狭い場所での撮影はカメラが“引けない”ので色々大変そうですが、それでも原作を大事にされたのですね。


池田:結局は“何を撮りたいのか”ということだと思います。私たちには「伊咲と丸太のドラマを撮るんだ」「この七尾市という場所で見せるんだ」ということが第一にありました。撮影では何度も大変なことがありましたが、うちのチームは同年代が多く、問題が起こる度に膝を付き合わせて話し合うことができた。物事が一方的に決まり、ただやらざるを得ないということではなく、皆が状況を理解した上で解決案を出し合い考えることができた。そういう意味ではすごくいい現場だったと思います。


Q:これまで多くの映画やドラマを手掛けられてきましたが、初期に作ったものと最近作ったものでは、現場での立ち振る舞い含めて変化は感じますか。


池田:監督としてスタッフ、キャストの先頭に立って旗を振るんだという覚悟は、撮り始めた頃と比べたら随分変わったと思います。昔は「私はこれが撮りたいんです!」と、ただ旗を無闇に振っていただけだった。それが今は、各々なにを考えているか、どうしたいかというところをすくい取りながら、彼らの思いや考えを大きく吸収して最終的な軸にまとめあげることが出来るようになった、これは圧倒的な違いですね。それでも未熟なところはたくさんありますし、まだまだ道半ばですね。




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監督:池田千尋

北海道生まれ、静岡県出身。2008年、西島秀俊を主演に迎えた『東南角部屋二階の女』で長編監督デビュー。主な監督作に『先輩と彼女』(15)、『スタートアップ・ガールズ』(19)、『記憶の技法』(20) など。熱狂的なファンを生み第59回ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞受賞するなど絶賛されたドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(21/関西テレビ系)では第108回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞を受賞。脚本家としても活躍しており、『クリーピー 偽りの隣人』(16/黒沢清監督)、『Red』(20/三島有紀子監督)、『空に住む』(20/青山真治監督)などにも共同脚本として参加している。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成





『君は放課後インソムニア』

全国公開中

配給:ポニーキャニオン

©オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会

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