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『リボルバー・リリー』行定勲監督 現代の情勢が突きつけた、この映画を作る意義【Director’s Interview Vol.340】

『リボルバー・リリー』行定勲監督 現代の情勢が突きつけた、この映画を作る意義【Director’s Interview Vol.340】

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参考にしたコーエン兄弟のアクション



Q:アクションシーンにはどのように取り組まれましたか。


行定:アクション映画ということで、今回頭にあったのはコーエン兄弟でした。コーエン兄弟が銃を使うときって、いつも不意をついていて“間合い”がある。最近のアクション映画はリアル志向で、段取りをつけず殴り合わせて撮っているような作品もありますが、映画の様式美としては、やはり間合いがあってこそのアクションだと思うんです。今回はそれを目指したく、“殺陣”としてのアクションにしっかり取り組みました。例えば、小曾根が二丁拳銃を持つシーンが出てきますが、ただカッコ良いだけで2丁持たせたわけではなく、戦いの状況やリボルバー以外の拳銃(ベレッタ)を持つ意味、その裏に隠された深い意図など、スタッフと散々議論しながら撮っていきました。


また、撃たれたときの血飛沫はCGで作っていますが、最初に見たときはその飛び具合があまりにも華々しく、まるで花びらのようでした。小曾根たちは致命傷にならないように撃っているのですが、最初に作った血飛沫だと明らかに全員即死しているレベル。その辺はちょっと抑えてもらいましたね。大作映画だから、血飛沫も派手な方がいいという考え方もあるかもしれませんが、抑えることで結構生々しくなる。また、今と当時の銃の威力は絶体的に違うはずで、距離感とその威力もエキスパートの方々に検証してもらいました。撃った距離が近ければ弾は貫通していて、遠くから撃たれた場合は貫通しないなど、その結果を血飛沫に反映させています。



『リボルバー・リリー』©2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ


Q:こういった大作映画は最近の日本では珍しいですが、手応えはいかがでしたか?


行定:いい経験をさせていただきました。こういう映画が日本でちゃんと観ていただける可能性があるならば、これに追随してエンターテインメントの可能性を変えなければいけない。僕は『世界の中心で、愛をさけぶ 』(04)のときに、それを経験しました。ああいう小さな映画でも多くの人が観てくれるのであれば、ちゃんと映画を作っていこうという気持ちになりましたし、実際その後は青春映画や純愛モノがどんどん作られるようになった。それと同じことを久々に感じています。


また、もし小曾根百合を中心としたキャラクターたちが皆さんに受け入れてもらえるのであれば、今作が大いなる序章となって今後シリーズ化出来ればいいなと思っています。もし仮に、2、3が作られるのであれば滅茶苦茶面白くなると思いますよ。海外に行ったり、戦後の話になったりと、もう僕の中では密かにあるんです(笑)。



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監督:行定勲

2002年『GO』(01)で、第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞を始め数々の映画賞を総なめにし、脚光を浴びる。2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』が、興行収入85億円の大ヒットを記録し社会現象に。2018年『リバーズ・エッジ』が、第68回ベルリン国際映画祭にて国際批評家連盟賞を受賞。その他にも、『北の零年』(05)、『今度は愛妻家』(09)、『真夜中の五分前』(14)、『ナラタージュ』(17)、『窮鼠はチーズの夢を見る』(20)等を手掛ける。情感あふれる耽美な映像と、重層的な人間模様が織り成す行定監督作品は、国内外で高く評価され、観客の心を揺さぶり続けている。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『リボルバー・リリー』

2023年8月11日(金)全国公開

配給:東映

©2023「リボルバー・リリー」フィルムパートナーズ

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