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『6月0日 アイヒマンが処刑された日』ジェイク・パルトロウ監督 手法や視点を変えて描くホロコースト【Director’s Interview Vol.348】

© THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP

『6月0日 アイヒマンが処刑された日』ジェイク・パルトロウ監督 手法や視点を変えて描くホロコースト【Director’s Interview Vol.348】

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映画だからこそ語れる物語



Q:ホロコーストのようなテーマを、エンターテイメントとして映画化する意義をどのように感じていますか。


パルトロウ:小説や演劇ではなく、映画だからこそ語れる物語があります。文化的、宗教的に火葬が禁じられている国で、大量殺戮を犯した人間の遺骸を消滅させたという事実は、論文として書くことも出来ますが、映画では物語として体感してもらうことが可能です。映画作家として、映画で表現すべき物語を常に探していますし、脚本を書いているときはそれを何度も自身に問いかけるようにしています。“映画的な映画を作る”ことをいつも心がけています。



『6月0日 アイヒマンが処刑された日』© THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP


Q:パルトロウ監督は、偉大な先人たちが培ってきた映画技術の駆使やその研究が好きなタイプかと思いますが、それらの技術と自身の作家性のバランスはどのように取られていますか。


パルトロウ:難しいですよね。やはり時間と経験が大きな助けになります。小さな頃から映画を観ていると、自然と影響は受けてしまうもの。特に映画にハマっている人たちは、普段の生活よりも、映画の中で生きる時間の方が長い時期もあるくらいでしょう。ウディ・アレンも「影響による不安」について語っていたことがありますよね。映画における自分のヒーローたちはとても大きな存在ですが、自分が映画監督になったときには、そのヒーローたちを少しずつ取り払っていかなければならない。それには時間が掛かりますが、だんだんと自分らしい映画監督になっていくものです。


この映画は自分が生きていた時代の話ではありませんが、とてもパーソナルな映画だと思っています。作り方やアプローチの仕方がパーソナルだったからです。ロベール・ブレッソンは“カメラペン”というような言い方をしていましたが、映像を作っていくことが、まるでペンで紙に書くように、生きて呼吸をするようになっていくこと。それこそが映画作りなのです。そうした経験に加えられる最後の“閃き”は、映画を愛する心から生まれるもの。経験を重ねていくと、誰かの影響だけではなく、自分から出て来るものも自然と大きくなってくるのです。



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監督・共同脚本:ジェイク・パルトロウ

1975年、カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。フィクション映画『マッド・ガンズ』、『恋愛上手になるために』では監督を、 ドキュメンタリー映画『デ・パルマ』ではノア・バームバックと共同監督を務めた。人気テレビドラマ『ボードウォーク・エンパイア4欲望の街』、『ホルト・アンド・キャッチ・ファイア 制御不能な夢と野心』なども手がけている。また、ニューヨーク・タイムズ・ マガジンの委託により製作したショートフィルム『The First Ones(原題)』は、エミー賞にノミネートされた。ジェイクの作品は、サンダンス、べネチア、ニューヨーク、カルロヴィ・ヴァリなどの名だたる国際映画祭で上映されている。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『6月0日 アイヒマンが処刑された日』

9月8日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国公開

配給:東京テアトル

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