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  3. 『BAD LANDS バッド・ランズ』原田眞人監督 原作を大胆に脚色したクライムサスペンスで描く、独立した女性像【Director’s Interview Vol.359】
『BAD LANDS バッド・ランズ』原田眞人監督 原作を大胆に脚色したクライムサスペンスで描く、独立した女性像【Director’s Interview Vol.359】

『BAD LANDS バッド・ランズ』原田眞人監督 原作を大胆に脚色したクライムサスペンスで描く、独立した女性像【Director’s Interview Vol.359】

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主役2人の絶妙な関係性



Q:原作では主人公は男同士で、その関係性も殺伐としています。それが安藤サクラさんと山田涼介さんのコンビになったことで、不思議な温かみを感じるドラマになっていますね。


原田:原作の2人の関係性も魅力的なのですが、映画にするには冷たすぎると思いました。もっと2人の距離を縮めるためにはどうしたらいいか色々考えました。それで山田さん演じるジョーは、ある種の温かみがあって共感できるチャーミングなサイコパスにしてみた。そんな彼が姉であるネリのために自分を犠牲にしてでも行動する。サイコパスに一瞬訪れる正義の行いですよね。そういう部分にも割とベルイマンの影響があります。


あまり好きなベルイマン映画ではないですが、意識したのは『叫びとささやき』(72)です。とにかく主人公姉妹たちの仲が悪くて、彼女たちの苦痛を執拗に描く。だけどラストでは仲の悪い彼女たちにも一瞬だけ平和が訪れ、その一瞬の幸せのために人間は生きる価値がある、という終わり方をする。その要素をジョーに入れられたらと、脚本を書きました。



『BAD LANDS バッド・ランズ』©2023「BAD LANDS」製作委員会


Q:安藤さんと山田さんが演じる姉弟の独特の関係性は、どのように演出されたのでしょうか。


原田:リハーサルの時から雰囲気は良かったんです。キャスティングはもともと山田涼介さんの方が先に決まっていましたが、「ネリ役は安藤サクラになったよ」と伝えたら、すごく喜んでいました。安藤さんも山田さんと共演することに面白さを感じていたようで、双方がお互いの活動を見てきて、気になっていたようでした。


現場では僕が細かいことを指示しなくても、こちらがイメージしている世界にどんどん入ってくれて、遊び的な感覚でアイデアも色々提案してくれました。そういう柔軟性が映画にも匂いとして出ている気がします。


Q:映画の後半、ネリとジョーの姉弟の関係性が深まっていく様子が、独特の会話劇で描かれていくのが印象に残ります。


原田:2人が感覚的に理解してくれていて、とにかく脚本から色々な世界をイメージしてくれていましたね。あとは彼らが話す関西弁も大きなポイントでした。2人とも大阪出身ではないので、それぞれ別の人を方言指導としてつけました。その指導者も実は役者さんで、映画にも出ています。彼らに指導してもらいつつ、安藤さんと山田さんには「標準語になってしまってもいいから、アドリブのセリフをどんどん出していいんだよ」と伝えました。


関西弁のネイティブでないと、とっさに言葉が出てこないかもしれない。でもそこで芝居を止めてほしくなかったんです。彼らは一流の役者だから、そういうサジェスチョンがあると自分の中で発展させたものを見せてくれるんです。




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