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『死霊館のシスター 呪いの秘密』マイケル・チャベス監督 そこに悪魔がいなくても、いるように思えるホラー演出の美学【Director’s Interview Vol.363】

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『死霊館のシスター 呪いの秘密』マイケル・チャベス監督 そこに悪魔がいなくても、いるように思えるホラー演出の美学【Director’s Interview Vol.363】

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ホラーの名手ジェームズ・ワンとの緊密なコラボレーション



Q:ジェームズ・ワンは『死霊館 エンフィールド事件』(16)で初めてヴァラクを描こうとした際に、尼僧ではなく2本の角を持つ怪物にしようとしていたとのことですが、それと関連があるのでしょうか?


チャベス:本作の脚本の初稿に、すでに登場していました。『死霊館 エンフィールド事件』でジェームズが当初そのような設定にしていたのは聞いています。しかしメインの悪魔としては様式化され過ぎていると感じ、尼僧にギアシフトしたとのことでした。これはさすがですね。ヴァラクのシスター姿がアイコニックなのは、カトリックをダークにしたバージョンであり、尼僧を冒涜しているからですよね。対して、モンスターは意外なところで登場させるのが効果的ではないかと僕は考えています。それに見え過ぎてはいけない。露出を押さえて瞬間的に出すことが効果的なのです。


Q:ヴァラクを恐ろしく見せるうえで心掛けたことは?


チャベス:ロケ地のフランスでは、ストリート・アートのひとつとして、たとえばマンホールに二つ穴があったら誰かがペンキやペンで顔を描く、というのがあるんです。その環境に顔を見てしまうという、文化的な本能がとても気に入りました。観客にもそんな風に、映画を観ながらついつい影や暗闇を見つめて欲しかった。“シスター、いる? いない?”というように、実際にはわからないけど、そう見えるような。最初にヴァラクを影から登場させることで、そんな風に闇を見るクセを持ってもらえたと思っています。実際、映画を観た方から、何もいないシーンを指して“あそこにヴァラクがいましたよね?”と言われたりします。いなくても、いるように見える、そんなヴァラクの実体化の体験を作り出したかったんです。スタンドの雑誌の列がヴァラクの姿になるのも、今までにない描写だし、そういう意味では効果的だったと思います。



『死霊館のシスター 呪いの秘密』© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved


Q:ジェームズ・ワンとの今回とのコラボについて、関係性の変化や議論の対象になったことについてお聞かせください。


チャベス:僕のキャリアがあるのはジェームズのおかげです。彼は僕のすべての監督作のプロデューサーでもあり、関係性としても、彼はメンターであるだけではなく、友達と言える存在になりました。創作の方向性に関しては、より大きな信頼と自由をもらっています。今作に関して彼と最初に話し合ったことのひとつが、モリースに関わるストーリーの核心についてでした。


モリースは『死霊館』でおなじみのキャラクターで、除霊が失敗した結果、ショットガンで自殺してしまった実話の人物が元になっていて、『死霊館』伝説の一部でもあります。僕らがおこなった最も重要な議論のひとつが、この作品でモリースがその悲劇的な結末を迎えるかどうかでした。ジェームズは、その結末、つまりモリースが自死する結末を望んでいた。ただ、僕は『死霊館』ユニバースの特徴として、どんなにダークでも希望がある点が好きなんです。それにモリースの死自体『死霊館』ユニバース内の大事件なので、先にとっておいてもいいのではないかと思いました。





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