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『死霊館のシスター 呪いの秘密』マイケル・チャベス監督 そこに悪魔がいなくても、いるように思えるホラー演出の美学【Director’s Interview Vol.363】
2013年の『死霊館』の大ヒット以来、同作の続編をはじめ、広がりを見せてきた『死霊館』ユニバース。この傍系の中でも、『アナベル』シリーズに匹敵する人気作となった『死霊館のシスター』の続編『死霊館のシスター 呪いの秘密』が、本国アメリカはもちろん、日本でもスマッシュヒットを飛ばしている。人間に取り憑く尼僧姿の悪魔ヴァラクが、今回は寄宿学校を恐怖のドン底に陥れるストーリー。ショックホラーとしてのテイストはもちろん、ドラマ面も強化され、これがなかなか見応えがある。
『死霊館』ユニバースは、外枠の部分でもちょっと面白い展開を見せている。ユニバースの生みの親ジェームズ・ワンを除くと、これまでの作品はホラー界の若い才能が一作ずつ監督を務め、複数の作品を手がけた者はいなかった。しかし、『死霊館のシスター 呪いの秘密』のマイケル・チャベス監督は、『ラ・ヨローナ/泣く女』(19)、『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(21)に続いての登板。プロデューサーを務めるワンの信頼が厚いことは想像に難くない。いずれにしても、今やユニバースを支える俊英であることは間違いない。そんなチャベス監督に、この新作について話を聞いた。
『死霊館のシスター 呪いの秘密』あらすじ
1956年、フランスで起こった神父殺人事件をきっかけに、世界に悪が蔓延。ある特殊な能力を持つ主人公のシスター、アイリーンは教会の要請を受けて事件の調査をすることに…。人々を救うため、命の危険をかえりみず祈りをささげるアイリーンは、ついに悪の元凶“シスター ヴァラク”と対峙する。
Index
フランス映画の名作から受けた多大な影響
Q:ユニバース3作目の登板となりますが、本作をユニバースのトーンに溶け込ませるうえで、気を配られたのはどんな点ですか?
チャベス:このユニバースにおける統一感というのはなかなかトリッキーなところがあると思います。というのも、『死霊館』ユニバースはどれも怖い映画で、スリリングなライド/アトラクションであり、必ずその期待にしっかりと応えてきました。同時にそれらは非常に特殊な体験でもあると思うんです。僕ら作り手は常に限界を押し広げようとしています。まったく同じアイデアや恐怖を提供し続けることはできないし、同じストーリーを語り続けることもできない。大事なのは、『死霊館』の伝統と新味のバランスですね。
例えば、本作に登場する2本の角を持つ悪霊は、はたしてこの映画やユニバースにフィットするのかどうか、かなり話し合いをしました。僕的にはまさにこの映画が必要としていたものだったし、あのキャラクターは間違いなく『死霊館』ユニバースの、そして『死霊館のシスター』の世界観の一部だった。前作『死霊館のシスター』のインスピレーションのひとつはブラム・ストーカー原作の『ドラキュラ』(92)だったり、ああいったゴシック・ホラーだと思っています。観直してみると、モンスター・バット(蝙蝠)がすごく気に入って、それが大きなインスピレーションになりました。子供の頃、あれにものすごくビビったことを覚えています。すべての面でそれまでの限界を押し広げようとする中で、このようなモンスターを登場させることも、そのひとつの手段でした。
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Q:メインの舞台は寄宿学校ですが、その点で参考にされた作品はありますか?
チャベス:何度も観直している大好きな映画ですが、フランス映画『悪魔のような女』(55)です。『ラ・ヨローナ~』を撮る前にも、バスタブのシーンのために観直しました。今回の映画の舞台は1950年代のフランスでもあるので、まずその時代の空気をとらえておきたかった。実は、当初の脚本では舞台は寄宿学校ではなく、小村でした。しかし、それでは世界観が大きすぎると感じて、寄宿学校という限定空間にしましたが、それも『悪魔のような女』の設定からきています。学校にある祭壇も同作からの引用です。僕にとっては、大きなインスピレーションを与えてくれる作品ですね。モノクロの古い映画だから観ていない人も多いと思うけれど、全人類にお勧めしたい名作です(笑)。