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『NO 選挙, NO LIFE』前田亜紀監督 選挙という豊かな人間ドラマをユニークな二重構造で描くドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.371】

『NO 選挙, NO LIFE』前田亜紀監督 選挙という豊かな人間ドラマをユニークな二重構造で描くドキュメンタリー【Director’s Interview Vol.371】

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特殊な二重構造となった理由



Q:映画は2022年の参議院選挙と、その後の沖縄県知事選の2部構成になっています。参議院選挙の方が「前フリ」で、沖縄県知事選の方が前田さんの思い入れがより強いように感じました。


前田:前半の参院選のシークエンスは「ハウツー選挙」、映画の概要みたいな意味合いがあると思います。色々な候補者がいて、東京に限らずあらゆる地域の選挙でこういう人たちがいるのが日本の選挙なんだと。沖縄県知事選に関しては沖縄の特殊な状況があるので、他の地域とは違う沖縄独自の要素を描く意味合いもありました。


あと大きかったのは、畠山さんが突然「選挙取材をやめる」と言い始めたことです。「次の沖縄の選挙取材が最後だ」と言うものですから、じゃあ私も最後まで見届けなければいけないなと。



『NO 選挙, NO LIFE』(C)ネツゲン


Q:この作品のユニークな点は取材の構造にあると思います。畠山さんは候補者の取材をしていて、その畠山さんを前田さんがさらに外側から取材するという入れ子構造になっている。


前田:自分でもすごく不思議な映画だと思います。私は畠山さん自身を取材しているわけではないんです。畠山さんのワンショットインタビューは一回だけ撮りましたが、それ以外で畠山さんに「あなたとは?」という問いかけはせず、彼の肩越しに見える世界を2人でひたすら語り合う。畠山さんの肩越しに見える世界を撮っていて、たまに畠山さんの考えも入ってきたりするので、常に撮るものが揺れている感じですね。


Q:選挙を執拗に取材する畠山さんの情熱の源泉を掘り起こすアプローチもあり得たと思いますが、そうはしなかった。どんな狙いで取材をされていたのでしょうか。


前田:普段見えない選挙の世界がこんなに面白いなら、これを世の中の人が見たらみんなが興味をもって投票に行くんじゃないかと。それが私のモチベーションでした。だから畠山さんの肩越しにカメラを置いて、彼をフィルターとして選挙戦を撮ることを最後まで貫いています。


でもやっぱりドキュメンタリーは物語です。だから畠山さんが選挙の取材を辞めようと思ったり、そこから選挙にどう向きあっていくのか、という物語があるからこそ映画としてまとまった部分もあります。物語の軸に畠山さんがいるからこそ展開できるけど、見つめたいのはあくまで選挙そのもの。本当はどちらかに寄せた方が分かりやすいけど、その微妙なバランスを壊したくなかったんです。




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