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『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】

『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】

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無類の面白さを誇るドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』(20 ※以下『なぜ君~』)の監督・大島新の新作は、前作の姉妹篇とも言える『香川1区』。


結論から申しあげると、本作もすこぶる面白い。エキサイティングな選挙戦と濃密な人間ドラマ、そして衝撃的な事実が詰め込まれた本作は、極上の幕の内弁当のごとく隙のない映画だ。選挙の映画?難しそう…という偏見をうち捨て、是非劇場に駆けつけて頂きたい。


本作の見どころは、2021年10月に行われた衆議院選挙。そこで己の進退をかけて戦うのが立憲民主党の小川淳也、その対抗馬は自民党の平井卓也(初代デジタル大臣)。さらに日本維新の会の候補も加わり、三つ巴の激闘を繰り広げる。


大島組はその選挙戦で、主人公の小川だけではなく、対立候補たちにもカメラを向けることで、我々が観たことのない選挙の実相をあぶりだし、さらに衝撃的な事実を観客につきつける。


前作『なぜ君~』で、最高のエンターテインメントこそが、最も効果的に観客にメッセージを伝えうることを証明した大島は、今作でまたもや観客の心に大きな何かを残すことに成功したのだ。


2022年、最大の話題作となること必至の本作。その内幕を大島監督にたっぷり語ってもらった。


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わずか1年半で完成した続編



Q:前作『なぜ君~』は17年かけて完成に漕ぎ着けましたが、本作は1年半というハイペースでの制作でした。この間の経緯をお聞かせください。


大島:前作が完成した後も、小川淳也さんの取材は続けようと思っていました。小川さんを追っていくのであれば、どういうタイミングで作品にできるかわからないけど、例えば5年先くらいかもな、と思っていました。


その矢先、去年の9月に国民民主党の一部と立憲民主党が合流し、無所属議員も加わって、新たな立憲民主党になりました。その時に、実は一部の人たちから小川さんに「代表戦に出ないか」という打診があったんです。



『香川1区』© 2021 NETZGEN


Q:その事実は公になっていますか?


大島:なっていないです。でも結局、推薦人が集まらなかったのと、小川さん自身も前向きになれず出馬しなかった。それはなぜかというと、彼が小選挙区で当選していないからなんです。これは不文律のようなもので、大きな枷です。(※筆者注:小川淳也は2017年、香川1区で落選、比例で復活当選した)


小川さんにとっては、その負い目もあるし、50歳を過ぎたら早期に引退すると宣言していた。だから次の選挙が非常に大きな意味を持つことはわかっていました。時を同じくして、菅政権ができ、小川さんの選挙区での対立候補である平井卓也さんがデジタル改革担当大臣になった。映画の影響もあって小川さんの知名度は上がっていたとはいえ、今度の選挙の相手はデジタル大臣という内閣の目玉ともいえる大臣になったわけです。


地方の選挙区で「大臣」という肩書は大きいんです。ただでさえ強い地盤を持っている平井さんなのに、「大臣」という肩書までついてしまった。これは小川さんにとって壁がさらに高くなった。

それで、選挙そのものをテーマにした、スピンオフのような映画ができないかと、昨年の秋ぐらいから思い始めていたんです。


あともう一つは自民党の強さの正体は何のか、それを知りたいという思いもありました。それで『香川1区』というタイトルで映画を作ろうと決めたのは、今年の5~6月ぐらいでした。




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