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『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】

『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】

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『なぜ君~』は選挙に影響したのか?



Q:小川淳也さんが小選挙区で勝利したのは『なぜ君~』がかなり影響していると思われますか?


大島:これは監督である僕から言いづらいですけど、影響が無かったとは言えないでしょうね。ただ小川さんの事務所の熱は、実際に生身の小川さんと接して、それでさらに応援しようと思った人たちがいたからなんです。もし小川さん本人にがっかりしたとか、ちょっと違うなと思ったりしたら、ああはなってはいないはずです。だから全てが映画の影響ではなく、あくまで一つのきっかけだと思っています。


Q:ドキュメンタリーが現実に介入し影響を与えていくことについて、どういう風に捉えられていますか?


大島:映画であろうが、テレビであろうが、作品で表現をして世の中に影響を与えることがあるならば、それはそれで良い事で、励みになることのような気もしていたんです。でも実際にこうなってみると、「どう捉えたらいいんだろう」みたいな感じはあります。本当に不思議と言うか。自分でも、まだ受け止めきれていない、咀嚼できてない部分です。


Q:大島監督が、これからどういう視点で小川さんと対峙していくかとても楽しみです。


大島:でもこの『香川1区』で一旦お休みというか、少し引いて見ていたいという気はしますね。



『香川1区』© 2021 NETZGEN


Q:現実に介入しすぎた、という思いもあるのでしょうか。


大島:ちょっとそういう気持ちもあるかも知れません。例えば社会告発型のドキュメンタリーがありますよね。「原発反対」の立場から撮って、その作品によって原発がなくなる事が目標といった運動です。その活動自体はとても尊い、意義のある仕事だと思います。でも、実際に現実が動くかというと、そんなに簡単ではない。


私の場合で言うと『なぜ君~』が、政治全体を動かしたとは全く思いません。ただ香川1区の選挙に関して言えば、間違いなく影響したわけで、これを自分はどう捉えるべきなんだろうかと。ましてや平井さんからはPR映画という批判も受けたので。


Q:でも私は本作のラストは、大島さんが「小川淳也を今後も見ていくぞ」という決意表明に思えたのですが。


大島:変な言い方なんですけど、ここから先、小川淳也は衆人環視の状態になるんですよね。それこそ、代表戦の時には番記者がついていたし、色んな人がウォッチするようになるので、まあ別に僕じゃなくてもいいかなと。


あとは結構いろんな人が、小川さんの周りに集まるようになった。私も含めて仲良くやっているんですけど、僕は小川さんの隣の席の取り合いをしたくない。でも有名になると、人ってそういうところが出てくるじゃないですか。


Q:自分が一番その人に近いんだ、みたいな。


大島:そうです。でも、そこはちょっと離れたいという思いも若干あったりしますね。


Q:本作は全国で公開されますが、舞台となった地方都市や農村部の有権者にこそ観てもらいたいと思います。でも自民党を支持する人達はやはり観ないと思われますか?


大島:なかなか観ないかもしれないですね。でも試写を観てくださった方の意見を伺っていると、刺さる人には確実に刺さるし、「エンタメとして面白い」って言ってもらえたので、それが何よりですね。


Q:同感です。作品としてエキサイティングで面白い。ぐいぐい観てしまいます。


大島:「娯楽大作」って誰かに言われましたね(笑)。




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監督:大島 新

ドキュメンタリー監督、プロデューサー。1969年神奈川県藤沢市生まれ。1995年早稲田大学第一文学部卒業後、フジテレビ入社。「NONFIX」「ザ・ノンフィクション」などドキュメンタリー番組のディレクターを務める。1999年フジテレビを退社、以後フリーに。MBS「情熱大陸」、NHK「課外授業ようこそ先輩」「わたしが子どもだったころ」などを演出。2007年、ドキュメンタリー映画『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』を監督。同作は第17回日本映画批評家大賞ドキュメンタリー作品賞を受賞した。2009年、映像製作会社ネツゲンを設立。2016年、映画『園子温という生きもの』を監督。2020年、映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を監督。同作は第94回キネマ旬報文化映画ベスト・テン第1位となり、文化映画作品賞を受賞。2020年日本映画ペンクラブ賞文化映画部門2位、第7回浦安ドキュメンタリー映画大賞2020大賞、日本映画プロフェッショナル大賞特別賞を受賞した。プロデュース作品に『カレーライスを一から作る』(2016)『ぼけますから、よろしくお願いします。』(2018)など。文春オンラインにドキュメンタリー評を定期的に寄稿している。



取材・文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。





『香川1区』

2021年12月24日

緊急先行公開中!

東京・ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋 


2022年1月21日(金)より

全国公開!すでに64館で上映決定!

香川県では一挙4館で上映

イオンシネマ高松東、イオンシネマ綾川、イオンシネマ宇多津、高松ソレイユ


配給:ネツゲン 

© 2021 NETZGEN

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