1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】
『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】

『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】

PAGES


撮影妨害まで受けた選挙戦の取材



Q:本作のクライマックスは、『なぜ君~』と同じく衆院選になるわけですが、撮影にあたって意識されたことはありましたか。


大島:起きていることは、ちゃんと記録しようとは思っていました。でもテレビ的な意味での公正中立は無理だと分かっていたし、そこに意味も感じない。公の場に来ている対立候補の平井さんや町川さんの演説をちゃんと捉えて、出来る範囲で直接取材もしようと思っていました。


Q:今回は小川候補だけでなく、他の候補も取材しているので、撮影も大変だったのではないでしょうか。


大島:公示後からは、毎日ロケをどうこなすかで手一杯でした。各候補の選挙運動のスケジュールを確認して、僕と、高橋カメラマン、前田プロデューサーがそれぞれどこに行くか、撮影班を分けなきゃいけない。それ以外にも、調査報道的な取材もする必要があり、毎日毎日「明日はどうする?」で頭がいっぱいでした。


Q:前田プロデューサーが平井さんの街頭演説を取材しているときに、撮影妨害を受ける場面も衝撃的です。あれはどういった人物なのでしょうか。


大島:誰かは、わからないですね。


Q:平井さんの演説を大島監督が取材するシーンもありますが、その時妨害は無かったんですか?


大島:ないですね。僕は平井陣営に顔が知られているので、ちょっと対応が違うんです。前田の場合は、あの前に警察に通報されたりして、名刺を渡している。それで平井陣営に「女で前田っていうのがいる」という情報が回ったんです。それでああいうことが起きたんだと思います。


Q:前田プロデューサーが、女性だから狙われた可能性もありますね。


大島:あると思います。だとすれば愚かなことですよね。前田プロデュサーは、百戦錬磨の取材者ですから、ちゃんとカメラを回し続けているし、すごくいい仕事してくれている。本当に頼んでもないのに、平井陣営が映画を盛り上げることを色々やってくれています。


Q:そうした取材の成果だと思いますが、特に印象的だったのは、小川さんと平井さんとの陣営の対比です。集まってきている人達にこんなに差があるのかと。



『香川1区』© 2021 NETZGEN


大島:公示の時、万歳をしている平井さんの周りにいる人たちのスーツ率が凄いですよね。


Q:スーツのおじさん率が高いです。


大島:あれは本当に映像の面白さで、すごく分かりやすく見えますよね。


Q:今回は平井さんと小川さんの対比の映画だとも思います。2候補を対比させることで、選挙の映像として非常に新鮮なものになっています。


大島:撮っている時から、多分そうなるだろうという感じはありました。やっぱり香川1区はキャラクターの立った候補者だから、余計にそう見えるんです。でも多かれ少なかれ日本全国で似たような構図はあるだろうと思っていて、そこは普遍的なものに見えたらいいなと思いますね。


Q:大島監督が小川さんと平井さんとの対比で一番印象に残ったことは何でしょう。


大島:一見、対抗馬の平井さんは、財力とか地盤とか、いろんなものを持っている人で、小川さんは庶民の息子で、持たざる人、みたいな感じなんです。でも小川さんぐらい家族とか周りに恵まれている人はいないと思いました。


あんなに息子のことを理解している親はいないし、あんなに選挙を応援してくれる娘っていますか?すごいと思うんです。映画には出てきませんが、ずっと小川さんを応援している中学校の同級生とかね。ガテン系のおじさんたちなんだけど、選挙戦の最終日はずっと自転車で一緒に走っていたりする。小川さんのように人に恵まれている候補者は他にいないと思います。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『香川1区』大島新監督 前作を凌ぐ娯楽大作で描いた日本の民主主義の実像【Director’s Interview Vol.171】