上野樹里と8時間ぶっ通しの打合せ
Q:上野樹里さんは今回の役にとても前向きで、監督と8時間もの打合せをされたそうですが、具体的にはどのようなお話をされたのでしょうか。
熊澤:8時間の打合せ、やりましたね。それが一回じゃないんですよ。3回ぐらいやっているんです。スタッフ同士でも8時間も話すネタは中々ないですよね(笑)。上野さんの熱量は本当にすごくて、最初に本人から電話がかかってきたのですが、お互い話が全然終わらなくて‥‥。翌週に所属事務所で会って打合せする約束をして電話を終えたのですが、翌日にまた電話がかかってきて、そこでも2時間くらい話しました。「今日もう一度読み返したのだけど、このシーンは…、このキャラクターは…」と自分が感じたことを沢山話されて‥‥来週事務所で話せばいいのに(笑)、感じたことを今すぐ話したかったんでしょうね。それぐらい「面白い!やってみたい!」と思ってくれて、嬉しかったです。
Q:上野さんにも今回のテーマに関する問題意識があったのでしょうか。
熊澤:それはすごくあると思います。この世界の在り方みたいなものから、マスコミが作り出す嘘についてまで、よく勉強されていました。世界が悪い方向に向かっていることを危惧している方ですね。地球のこともすごく考えていて、本人は農業もやっていて自分で作ったお米を僕にもプレゼントしてくれました。日本にやってくる難民についても勉強されていて、それについて意見を述べてくれました。今の世界にある問題についてすごく考えているんです。
『隣人X -疑惑の彼女-』©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社
Q:上野樹里さん演じる良子は、“惑星難民X”の疑いが掛けられていることもあり、その匙加減が難しかったと思います。役作りについて上野さんとどのようなことを話されたのでしょうか。
熊澤:上野さんに脚本を渡したのはクランクインの2年前。まだ第2稿でかなり初期の段階でした。もちろんその間、彼女はドラマなどで他の役をたくさんやっていました。その合間合間で脚本が変わるたびに打合せをし、ときには8時間の打合せを行ったりして(笑)、“良子”という役についてお互い徹底的に話し合いました。良子が使う衣装や持道具の話になった際は、上野さん自身「良子はこういう服を着るのでは?」「こういうカバンが良いのでは?」と私物をたくさん持ち込まれて、「これが良子に合っていると思う」と率先して役作りをされていました。そうやって2年近い時間をかけて“良子”を作り上げてきたので、いざ撮影が始まったらもう何も言うことはなかったですね。現場では微調整をしただけでした。