『スワロウテイル』あらすじ
むかしむかし、“円”が世界で一番強かった頃。いつかのゴールドラッシュのようなその街を移民たちは“円都(イェンタウン)”、と呼んだ。でも日本人はこの名前を忌み嫌い、逆に移民たちを“円盗(イェンタウン)”と呼んで蔑んだ。ここは円の都、イェンタウン。円で夢が叶う、夢の都。…そしてこれは、円を掘りにイェンタウンにやって来た、イェンタウンたちの物語。
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外国人労働者をめぐる問題を予見した慧眼
2018年12月8日未明、改正出入国管理法が参議院本会議で可決、成立した。アメリカをはじめとする諸外国と日本との関係を決定的に変えた真珠湾攻撃が行われたのが77年前の同じ日だった不吉な符合はさておき、この法改正によって日本人と外国人の関係が今後大きく変化することは間違いない。政府が「移民」という言葉を避け「外国人労働者」と表現するのは、少子化で不足する労働力を外国人に担ってほしいが、日本に根を下ろす生活者としての側面は認めない、真の共生を目指すものではないという本音があるからだろう。それは政治家と役人だけの本音ではなく、現政権を支持する保守主流派の有権者の本音でもあるはずだ。法案の審議に際して、多くの外国人技能実習生が失踪、死亡している悲しい事実が表面化したことも記憶に新しい。
『スワロウテイル』(C)1996 SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE
そんな今の時代に、岩井俊二監督の1996年の公開作『スワロウテイル』を見直すと、その先見性に改めて驚かされる。作品の根底にあるのは、均質さを求め異物を排除しようとする日本社会への違和感だ。