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『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』子役の扱い方における岩井俊二の徹底した戦略とは

(c)Rockwell Eyes Inc.

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』子役の扱い方における岩井俊二の徹底した戦略とは

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『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』あらすじ

小学生の典道(山崎裕太)と祐介(反田孝幸)たち男子5人は、花火を横から見ると丸いのか、平べったいのかという素朴な疑問を抱き、花火大会の夜、その答えを確かめるべく町のはずれにある灯台に行くことを計画する。同じ日、両親の離婚で転校することが決まっていたなずな(奥菜恵)は、プールで競う典道と祐介、どちらかの勝者と駆け落ちすることを企てる。少年と少女の、淡くも瑞々しい恋を懸けた勝負の行方が、ふたつの異なる結末へと昇華する。


Index


珠玉の少年時代の物語



 夏休み、プール、祭り、少年と少女、無人駅、そして花火――。岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(以下『打ち上げ花火』)は、観客の子どもの頃の甘酸っぱい記憶を刺激し、夏の匂いを画面いっぱいに充満させた瑞々しい傑作だ。ヒロインの体を這う蟻や、道端に生える雑草すらも、この作品の中では、たまらないほど魅力的に映ってしまう。


 ただし、ノスタルジーにどっぷりひたって見せるのではなく、子どもたちの関係性やディテールを子どもの目線からリアルかつ丁寧に描くことで、そこに用意された非現実的で過剰な設定が生きてくる。実際、「小学生の駆落ち」と「花火を横から見ると丸いか平べったいか検証する」を、自分が子どもの頃に体験したという者は、まずいないだろう。こうしたフィクションならではの設定を用いることで、クライマックスのプールの場面に象徴されるような過剰な展開にまで行き着いても、観客はその勢いに押されて、違和感など微塵も感じなくなる。製作当時、リアルを目指すあまりに物語に躍動がなくなる作品が増える中で、岩井俊二はフィクションの持つ可能性を、ジュブナイルの中に凝縮させることで、その後もアニメーションでリメイクされるまでに語り継がれる秀作を生み出したのだ。



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