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『WILL』エリザベス宮地監督 東出昌大の“絵になる違和感” 【Director’s Interview Vol.386】

『WILL』エリザベス宮地監督 東出昌大の“絵になる違和感” 【Director’s Interview Vol.386】

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「綺麗」の価値基準とは



Q:編集は全ての撮影が終わったあとに一気に編集されたのでしょうか? それとも撮影中でもつなげていたのでしょうか。


宮地:僕はいつも、撮り終わった後で素材を全部見直します。だから撮っている最中は素材を見ません。撮りながら気になることが出てくると、それをメモしておくくらい。編集しながら発見することも多々あるんです。ドキュメンタリーだから“オチ”は無いと思っていても、素材を見直しているときにそれを見つけることもある。素材チェックは早送りせずに実時間で見るので、大体300〜400時間くらいかかりました。でも今回の編集は全体的に早かったような気がしますね。


編集のやり方としては、最初に撮影内容を1日ずつ全部メモに書き起こす。それをプリントアウトして、ザックリした地図のようなものを作ってから作業を始めます。最初に10時間バージョンみたいなものを作って、そこから5時間バージョンにしてと、どの作品も大体その流れでやっています。


Q:膨大な量の素材を扱って編集していると、迷子になったりすることはありませんか。


宮地:カットしたシーンを「あそこは入れといた方が良かったのかな」みたいなことは良くあります。これはカットすべきか否かと、編集中はめっちゃ悩みますね。でもリズムみたいなところで悩むことは無い。編集を進めていくと、自分の意思を超えて道筋が見えてくるんです。



『WILL』©2024 SPACE SHOWER FILMS


Q:今後フィクション(劇映画)を撮りたい意向はありますか?


宮地:ありますね。ただし、是枝さんみたいにドキュメンタリーからフィクションに完全に路線を変えるようなことはないと思います。ドキュメンタリーと同じで、フィクションでも撮りたいものがあれば撮る。テーマが大事かなと。でも松居大悟くんや今泉さんみたいに、あんなにたくさん撮るのは無理でしょうね(笑)。


Q:影響を受けた映画や監督を教えてください。


宮地:以前、池松壮亮くんに「イ・チャンドン監督の特集上映をやってるよ」と教えてもらって『オアシス』(02)を観たのですが、衝撃を受けました。イ・チャンドンはBlu-rayを全作買ったくらい、めっちゃ観ていますね。特に『オアシス』はめちゃくちゃ好きです。人生で一番好きかもしれません。


オアシス』で主人公二人が踊るシーンがあるのですが、特殊効果を使っているわけではないのに、そこで一気に見え方が変わった。役者のパフォーマンスや演技だけで、あれだけ世界が変わったことに驚き、ショックを受けました。『WILL』の中では、写真家の石川竜一くんが、「みんな疑いもなく自分の生活を綺麗だと思い込んでいる」と話していますが、『オアシス』でも、今まで綺麗じゃないと思っていたものが、いきなり綺麗に見えるような感じがある。「綺麗」の価値基準みたいなものを揺さぶってくるんです。そこがすごく好きですね。カンパニー松尾さんの作品にもそういうところがあると思います。


Q:最後に、“エリザベス宮地”という名前の由来について教えてください。


宮地:カンパニー松尾さんの真似ですね。変えた方がいいですかね(笑)。いろんな人から本名に戻せば?って言われてます(笑)。




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監督/撮影/編集:エリザベス宮地

1985年、高知県生まれ。映像作家。2016年に公開した元恋人と過ごした2年間を当時の写真と映像で綴ったMOROHA『バラ色の日々』MVが話題を集める。2020年に公開した優里『ドライフラワー』MVはトータルで2億回再生を越える。ドキュメンタリーの最新作としてBiSHの解散ツアーに密着した『LOVE iS NOT OVER』、藤井風の怒涛の半年間に密着した『Fujii Kaze: grace 2022 Documentary』を2023年に発表している。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『WILL』

2月16日(金)より渋谷シネクイント、テアトル新宿ほか全国順次公開

配給:SPACE SHOWER FILMS

©2024 SPACE SHOWER FILMS

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