東出昌大の“絵になる違和感”
Q:ドキュメンタリーを撮り始める際、全体の構成はどこまで想定されているものなのでしょうか。
宮地:僕はミュージシャンのツアーにつくことが多いのですが、その場合は大体スケジュールが決まっている。ツアーの最初にリハーサルがあり、最後にはファイナルがあるので、ある程度想定しやすいんです。でも今回は半分も想定できませんでした。当初は週末の狩猟だけを追いかけようと思っていたのですが、どんどんテーマが増えてしまった。ある程度は予想して始めましたが、全然その通りにはなりませんでしたね。
Q:基本的な構成としては、本人のインタビューと普段の生活を撮りつつ、そこで何か面白いことが起きるのを待つ、といった感じなのでしょうか。
宮地:僕は出来事が起こるまで待つタイプかもしれません。まぁ無ければ無いで成立するとは思いますが、そうするとインタビューベースになっちゃう。それはあまり好きじゃないんです。言葉で説明できないからこそ映像というものがあるはずなので…。といっても、撮影期間が半年以下のドキュメンタリーなどは、インタビューベースになりがちです(笑)。
『WILL』©2024 SPACE SHOWER FILMS
Q:14ヶ月という長期に渡って取材していると、撮影初期と後期では対象への接し方や撮り方は変わってくるものでしょうか。
宮地:撮る方は変わっていったとは思いますが、でっくんの態度はあまり変わらなかったので…、お互いにずっと意識していなかった気もするし、逆にずっと意識していたような気もしますね。
Q:それだけの期間会っていると、人としての距離は縮まりますよね。
宮地:縮まりますね。でっくんって予定していたことを突然変えたりするんです。景色の追撮が必要な時があって、20分くらいで終わる撮影だったのですが、途中で狩猟を始めちゃって、どんどん歩いて行っちゃう。そういうのに段々イライラしてきますね(笑)。また、彼が住んでいるところは住所非公開なので、バレたら周りの人にも迷惑が掛かるのですが、にもかかわらず、でっくん自らメディアを呼んだりし始めた。最初はそういうところが全く理解出来なくて、ずっとプロデューサーに愚痴ってました。「あいつ本当に大丈夫か?」て(笑)。
Q:東出昌大という人間が面白すぎて、観ていて驚きました。
宮地:彼はすごく違和感があるんです。移住して生活しているから自然にも溶け込んでいるのですが、本人が役者だからなのか絵になってしまう。その“絵になる違和感”と言いますか、ドキュメンタリーを撮っているんだけれども、どこか浮いているような違和感みたいなものがずっとある。そこは他の猟師の方とは違いますね。ちょっと宇宙人っぽいし(笑)。でも変化という意味では、でっくんのいろんな面が見えて来ましたね。