庵野監督から学んだもの
Q:CGディレクターとして他の監督と一緒にゴジラを作ることと、ご自身で監督して作るときでは違いはありましたか。
上西:『シン・ゴジラ』で庵野秀明監督と一緒にやらせてもらい、いろんな影響を受けました。NHKのドキュメンタリー番組等でやっている通り、庵野さんのスタイルは大変なのですが(笑)、本当に良いものを作りたいんだという気持ちや、それを模索する姿勢を学ばせていただきました。一緒に作業して大変だったところは改善しつつ、良いものを作っていきたいという姿勢はそのまま受け継げればいいなと。そう思いながら作業をしていました。
Q:構図なども影響を受けているように感じました。
上西:かなり影響していますね(笑)。
Q:ゴジラは国内外でいろんなシリーズが作られてきたこともあり、ゴジラの見せ方も多岐に渡ると思うのですが、『シン・ゴジラ』の影響はかなり強いのかなと思いました。
上西:『シン・ゴジラ』の影響もあるのですが、『シン・ウルトラマン』もやらせていただきまして、そのときに庵野さんから「ウルトラマンの、この話とこの話はピカイチだから絶対に観とけ!」みたいなリストをもらったんです。それを観るとやっぱりメチャクチャ良いんですよね。庵野さんが良いと思って映画に落とし込もうとしている元々の作品に触れることが出来て、そこで学んだものは大きかった。それは自分の作品にも反映できたらと思っていました。また、他社さんの作品ですが『 ガメラ』シリーズの雰囲気も好きなので、良いところは色々と参考にさせてもらっています。
Q:日本のCGクオリティは『シン・ゴジラ』で突然上がったように見えたのですが、実際の現場はどうだったのでしょうか。
上西:白組で言うと、ゲームのムービーやCMやMVなどを日々作っていて、特にゲームのムービーは作り込みが多い。そこで培った技術とゴジラというコンテンツが合わさって、『シン・ゴジラ』が出来たという感じでした。だから技術的に突然レベルがあがったということではありません。
Q:『シン・ゴジラ』も『ゴジラ-1.0』も、もはやCGなのか実写なのか素人には見分けがつきません。
上西:僕らでも分からないときの方が多いですね(笑)。『ゴジラ-1.0』などもそうですが、ゴジラ自身や、出てくる兵器、破壊された街などはCGだと分かりますが、役者さんが演じているセットの続きの部分まではなかなか気づかない。全部はセットで作れないので、途中からCGになっていることが多いんです。気づかないのはVFX冥利に尽きますね。上手くいけばいくほど気付かないですから。
Q:『ゴジラ-1.0』のアカデミー賞視覚効果賞受賞はどんな思いがありましたか。
上西:ニュースを見てビックリしましたね。調布のスタジオのスタッフは「今か、今か、」と発表を待っていて、皆で大騒ぎをしていたみたいです。
Q:今後はどのようなキャリアを想定されていますか。
上西:それはもう、長編怪獣映画が撮れたらいいなと思っています。
監督/脚本/VFX:上西琢也
1987年生まれ。2013年株式会社白組入社。CGディレクター。映画『シン・ウルトラマン』ではキャラモデルスーパーバイザー・CGディレクター、『シン・ゴジラ』ではゴジラモデリング・コンポジットを務める。『寄生獣 完結編』『ゴジラ-1.0』他ゲームやMVにも多数参加。『ゴジラVSメガロ』と同じく脚本・監督・VFXを務めたシリーズ前作『ゴジラVSガイガンレクス』は、YouTube再生回数1000万回を突破している。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『GEMNIBUS vol.1』
6月28日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ 梅田にて2週間限定公開
配給:TOHO NEXT
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