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『辰巳』小路紘史監督 自主制作の自由度がもたらすものとは【Director’s Interview Vol.424】

『辰巳』小路紘史監督 自主制作の自由度がもたらすものとは【Director’s Interview Vol.424】

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2015年、⾃主制作映画『ケンとカズ』で、多くの映画ファンの度肝を抜いた⼩路紘史監督が、8年の時を経て新たに⽣み出した映画『⾠⺒』。2024年4月に公開されるや否や、そのクオリティと完成度の高さ、そして面白さが反響を呼び、SNSを中心とした口コミで多くの観客を動員。ロングランヒットを記録した。『ケンとカズ』と同じく『辰巳』も自主制作で作られた作品だが、商業映画と比べても全く遜色はなく、それどころか今年の日本映画のベストに挙げられる可能性すら感じさせる。最近の日本映画では少なくなった「ノワール」というジャンルを見事に描き出した傑作だ。


小路監督はいかにして『辰巳』を作り上げたのか。自主制作にこだわった理由とは。話を伺った。



なお、その『辰巳』が都内で待望の復活!7月26日より池袋シネマ・ロサにて1週間の限定上映。ご覧になった方もまだの方もこの機会にぜひ!



『辰巳』あらすじ

裏稼業で働く孤独な辰巳(遠藤雄弥)は、ある日元恋人・京子(龜田七海)の殺害現場に遭遇する。一緒にいた京子の妹・葵(森田想)を連れて命からがら逃げる辰巳。片や最愛の家族を失い、復讐を誓う葵は、京子殺害の犯人を追う。生意気な葵と反目し合いながらも復讐の旅に同行することになった辰巳は、彼女に協力するうち、ある感情が芽生えていくーーー。



今回は動画版インタビューも公開! あわせてお楽しみください!



Index


なぜ自主制作だったのか



Q:本作には『レオン』(94)や『グロリア』(80)を彷彿とさせるテーマがありますが、着想のきっかけを教えてください。


小路:『レオン』も『グロリア』もすごく好きですが、『ケンとカズ』(16)の編集中に海外ドラマの「ブレイキング・バッド」(08-13 TV)を観たのがきっかけです。脚本も素晴らしいし役者もすごい。ブライアン・クランストンが作品を引っ張っていますよね。この作品のように、しっかりした読後感のあるものを作ってみたい。それが大きかったですね。


Q:脚本執筆にはどれくらいの時間がかかりましたか。


小路:1年半ぐらいかけて50稿ほど書きました。当初、森田想さん演じる葵は男の子の設定でしたが、途中で女の子に変わりました。そこが一番大きな改変ですね。森田さんにオーディションに来てもらったのですが、断るのが勿体なかった。そのとき書いていた男の子の役だったら森田さんにお願い出来るのではと、オーディションを経て脚本を変更しました。



『辰巳』 ©小路紘史


Q:小路監督はプロデューサーも務めていますが、何をもって最終稿とする判断をされたのでしょうか。


小路:そこはすごく難しかったですね。自分1人だと決められないので、従兄弟でもあるカメラマンの山本周平と、もう1人のプロデューサーである鈴木龍の3人で検討しました。それでも、これが最終稿だという感じは何となくありました。また、具体的な期限は決めていなかったのですが、撮影時期の目安もあったので、そこが最終期限になったと思います。


Q:自由度を優先したがゆえ今回は自主制作になったとのことですが、自主制作以外の可能性はあったのでしょうか。


小路:自主制作以外の可能性はあって、制作会社の方と一緒に結構なところまで進んでいたのですが、明日その制作会議をしようというタイミングで「これは自主制作でやった方がいいのではないか」と思ったんです。それで制作会社の方に「やっぱり自主制作でやらせてください」と電話をして、気持ちを汲んでいただきました。商業から自主制作に切り替えたのは、自由度もありますが、2作目までは責任を持った立場で作品を作りたく、言い訳もしたくなかった。作品の完成度も含めて全て自分の責任でやるのが一番良いのではないかと。


Q:自主制作ということで製作費はどこから調達されたのでしょうか。


小路:大変でしたね。ドラマ・舞台の演出や脚本をやらせてもらって稼いだお金を使ったり、クラウドファンディングで資金を募ったりと、自分でお金を集めるのはかなり大変でした。





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