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『西湖畔に生きる』グー・シャオガン監督 伝統と現代を追求する「山水映画」があばく人間の欲望 【Director’s Interview Vol.436】

©Hangzhou Enlightenment Films

『西湖畔に生きる』グー・シャオガン監督 伝統と現代を追求する「山水映画」があばく人間の欲望 【Director’s Interview Vol.436】

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「人間の欲望」を問う



Q:監督のお話から、「現代」を通して人間の欲望を描く狙いがクリアに見えてきました。それと対照される「伝統」には、どのような狙いがあったのでしょうか?


グー:私のいう「伝統」とは、数百年もの歳月を経て現在まで残る、私たちがより良い生活をするために持っているべき価値観や、人間と自然の関係を理解するための考え方のこと。先人たちの経験や、多くの犠牲のもとに獲得された真理のようなものを指しています。



『西湖畔に生きる』©Hangzhou Enlightenment Films


たとえるなら、「伝統」は空に浮かぶ本物の月、「現代」は水の中に映った月影です。水中の月は、目に見えるけれども絶対につかめない。人間の欲望も同じで、対象物が実在するように思えても、その欲望を満たしたところで生死にまつわる問題は解決されないし、魂が救われることはありません。自分の外部にある欲望を追求した先に幸せがあると思っていたら、それは永遠につかめない水中の月影。かたや天上の月とは、人間本来の性質、あるいは自分の本性に立ち返ることの幸せなのです。


『西湖畔(せいこはん)に生きる』では、人がいかにして本来の自分に、また人間本来の性質に回帰できるかを描こうとしました。それは「古代の生活に戻るべきだ」という意味ではなく、現代の文明もひとつの道具として享受しつつ、人生における究極の意味を追求することです。




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監督:グー・シャオガン

1988年生まれ。浙江省杭州出身、現在も杭州在住。浙江理工大学に進学し、アニメ・漫画コースを希望したが叶わず、服飾デザインとマーケティングを学ぶ。在学中に映画に目覚め、映画を見始める。同時に宗教や哲学に興味を持ち、独自に学んでいた時に、ジェームズ・キャメロン監督『アバター』がヒンズー教の思想を反映していることに驚き、自分でも映画を作りたいと監督を志す。ドキュメンタリーや短編を制作後、初長編作品となった『春江水暖~しゅんこうすいだん』が、2019年カンヌ国際映画祭批評家週間クロージング作品に選ばれ、同年の東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞。2020年カイエ・デュ・シネマ誌年間ベストテン、2021年キネマ旬報誌外国映画ベストテンにも選出される(順位はどちらも7位)。最新作である本作を出品した第36回東京国際映画祭で黒澤明賞を歴代最年少で受賞。『春江水暖~しゅんこうすいだん』から「山水映画」と呼ぶ映画表現を求め、「山水映画」第二巻として本作を制作。第三巻も制作予定。



取材・文:稲垣貴俊

ライター/編集者。主に海外作品を中心に、映画評論・コラム・インタビューなどを幅広く執筆するほか、ウェブメディアの編集者としても活動。映画パンフレット・雑誌・書籍・ウェブ媒体などに寄稿多数。国内舞台作品のリサーチやコンサルティングも務める。





『西湖畔(せいこはん)に生きる』

9月27日(金)公開

https://moviola.jp/seikohan/

配給:ムヴィオラ / 面白映画

©Hangzhou Enlightenment Films

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