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『悪魔と夜ふかし』コリン・ケアンズ&キャメロン・ケアンズ監督 こだわった70年代の世界観【Director’s Interview Vol.439】

©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

『悪魔と夜ふかし』コリン・ケアンズ&キャメロン・ケアンズ監督 こだわった70年代の世界観【Director’s Interview Vol.439】

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ファウンド・フッテージ・ホラーの新たな傑作が誕生! 70年代の深夜番組の生放送中に起きた惨劇を“ファウンド・フッテージ”スタイルで描いた『悪魔と夜ふかし』は、世界各国で劇場公開されるやオーストラリア映画としては異例のスマッシュヒット。Rotten Tomatoesの批評家スコアは驚異の97%を記録、ホラー作家の巨匠スティーヴン・キングもXで絶賛するなど、各所で大きな話題を呼んでいる。


監督は、鬼才・コリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。脚本・編集も兼任する2人が、多大な影響を受けた70~80年代の名作へのオマージュを盛り込みながら、臨場感あふれる映像演出とクールな世界観を用いて、圧倒的面白さのホラーを生み出した。2人はいかにして本作を作り上げたのか。話を伺った。



『悪魔と夜ふかし』あらすじ

1977年、ハロウィンの夜。テレビ番組「ナイト・オウルズ」の司会者ジャック・デルロイ(デヴィッド・ダストマルチャン)は生放送でのオカルト・ライブショーで人気低迷を挽回しようとしていた。霊聴、ポルターガイスト、悪魔祓い……怪しげな超常現象が次々とスタジオで披露され、視聴率は過去最高を記録。しかし番組がクライマックスを迎えたとき、思いもよらぬ惨劇が巻き起こる!


Index


こだわった70年代の世界観



Q:屋内のワンシチュエーションというアイデアがとても良い方向に作用していました。物語を考える時はいつも映像化の方法も踏まえているのでしょうか。


コリン:そうですね。二人ともインディーズ育ちで、低予算の短編を10年くらい作ってきたので、制作方法を意識することが普通に身についています。もちろん、制約されることなく自由に描きたい思いはありますが、制作出来るチャンスがあるのならば、どうやって作ればよいか物理的な部分は考えた方がいい。とはいえホラーの場合は、ホラーファンが求める「スゲェ!」という瞬間が必要なわけで、そこは予算のことは考えずに派手にやりたい。制作方法を考えることは重要ですね。


キャメロン:出資者はVFXや特殊メイクのことまでは分かりませんから、その辺は自分たちでしっかり考えて調整する必要があります。


コリン:自分たちで編集を手掛けているので、仄めかしだけでも成立するところが分かる。その分、ホラーファンが求める瞬間にしっかりお金を掛けることが出来るわけです。


Q:70年代のテレビショーという設定が説得力をもたらし、ビジュアルや音楽含めた世界観が映画のクオリティを押し上げています。


キャメロン:とにかくブームマイクにこだわりました(笑)。より長くて細いものがベターなんです。今回は85年以前に生産されたマイクが必要だったため、実際に全部並べてチェックしました。70〜80年代のテレビ番組をリファレンスとして見まくったので、再現性を高めるためにもマイクにはかなりこだわりましたね(笑)。


コリン:音楽もこだわりの一つです。二人ともジャズ、フュージョン、ビッグバンドというあの時代の音楽が大好き。バンドの音楽を作曲してくれたロスコー・ジェームズ・アーウィンと一緒にリサーチをして、方向性を共有していきました。ロスコーは天才なので音楽制作自体は彼に任せたのですが、僕らもミュージシャンを目指したことがあるくらい音楽が大好きなんです。



『悪魔と夜ふかし』©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED


Q:昔の撮像管のカメラを使ったかのようなテレビショーのルックが素晴らしかったです。実際にどのように撮影されたのでしょうか。


コリン:撮像管のカメラは使えなかったので、SONYのVENICEという最先端のカメラで撮影しました。当時の状況に合わせて、スムーズじゃないズームや、揺れやブレなどは敢えてそのまま使っています。照明はヴィンテージのタングステンライトを使い、クレーンは70年代のイタリア製のものを使いました。そのクレーンで撮ると少し画が揺れるのですが、それがまた良い感じなんです。画角は4:3にして、現場で見ていたモニターも昔の4:3のものでした。撮影のマシュー・テンプルが、撮影スタッフ全員に時代考証を踏まえた画の方向性をレクチャーしてくれたこともあり、当時の雰囲気にかなり近い画が撮れたと思います。最終的には編集時のカラーグレーディングで、カメラマンやカラリストと一緒に画を作っていきました。


Q:人物などのエッジが微妙に滲んでいるのがリアルでした。


コリン:Uマチックやβマックスといった昔使われていたビデオテープの映像を、編集でフィルター的に重ねました。その効果も出ているかもしれません。




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