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『エマニュエル』オードレイ・ディヴァン監督 言葉はイメージよりもエロティックになりうる【Director’s Interview Vol.463】

© 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – PATHÉ FILMS

『エマニュエル』オードレイ・ディヴァン監督 言葉はイメージよりもエロティックになりうる【Director’s Interview Vol.463】

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コミュニケーションからエロスが生まれる



Q:そのシーンでは、エマニュエルがゼルダを見る視線も印象的でした。冒頭の飛行機でエマニュエルを見る男にせよ、エマニュエルとケイ(ウィル・シャープ)にせよ、見る・見られるという関係性も重要ですよね。


ディヴァン:はい。撮影監督のロラン・タニーとは、精神分析学でいう「スコポフィリア」、見つめることによって性的衝動が刺激されることがキーワードだと話していました。映画の冒頭では、エマニュエルはホテルの査察に来ているので、すべてをコントロールするために周囲を見ている。しかし物語が進むにつれ、彼女の視線はだんだんと欲望の視線に変わっていくんです。


Q:表情を見つめるにせよ、言葉を交わすにせよ、この映画はセックスそのものではなく、人間のコミュニケーションからエロスが浮かび上がる瞬間をとらえていると思います。セックス以上に親密なコミュニケーションを映し出そうとしているというか……。


ディヴァン:まさにその通りで、私は「エロティシズム」と「言葉」の深い関係を描くことができたと思っているんです。中盤でエマニュエルは、冒頭の飛行機で体験したセックスのことをケイに話しますが、そこでは映像を再び見せるのではなく、セリフで回想する形をとりました。それはエマニュエルが自分の体験を言葉で共有したいと思っているからだし、また私自身が、言葉はイメージよりもエロティックになりうると考えているから。ただ裸体を見せるのではなく、言葉や音楽、サウンドなど、ありとあらゆる感覚を総動員してエロティシズムを探究したかったんです。ある意味ではASMR(Autonomous Sensory Meridian Response /自律的感覚絶頂反応)的な映画だと思いますね。



『エマニュエル』© 2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – PATHÉ FILMS


Q:見つめ合う、語り合う、一緒にお酒を飲むなど、登場人物同士の繊細なやり取りはどのように演出されましたか。そこにエロスが生まれるのか、単なるやり取りで終わるのかは紙一重だと思います。


ディヴァン:どの取材でも話していないことですが、役者たちに「1分間、何も言わずに見つめ合ってください」と言うんです。ウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』(90)に、2人の登場人物が腕時計を1分間見るというシーンがありましたが、そうすると「つながる」んですよね。


もうひとつは距離感で、エマニュエルとケイが飛行機での話をしているとき、2人はもともと離れて座っていたのが、数センチずつ近づいていくんです。どんな身ぶりよりも、その数センチが雄弁に物語ってくれる。モニターの前で演技を見ていると、直感的に「ここだ!」という距離感がわかります。それは知性ではなく直感による判断です。


Q:リハーサルで綿密に演技を構築されたのか、現場の即興演技を重視されたのか、どちらでしょうか?


ディヴァン:会話のシーンはかなり丁寧にリハーサルをしました。やり取りが長いので、適切なリズムを見つけたうえで演じてもらう必要があったんです。かたや、セックスシーンでは話し合いを重ねました。リハーサルを重ねすぎて機械的な動きになることが心配だったので、シーンの意味や、表現したいことを正確に理解してもらうことを大切にしたんです。




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