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『あのこと』オードレイ・ディヴァン監督&アナマリア・ヴァルトロメイ 衝撃の映画体験で「壁」を超える【Director’s Interview Vol.267】

© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILMS

『あのこと』オードレイ・ディヴァン監督&アナマリア・ヴァルトロメイ 衝撃の映画体験で「壁」を超える【Director’s Interview Vol.267】

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1963年、フランス。大学生のアンヌは自らの望まぬ妊娠を知った。将来のため、アンヌはたったひとり、当時違法だった中絶を決意する。原作は、ノーベル文学賞受賞作家アニー・エルノーが実体験を描いた小説「事件」。その映画化である『あのこと』は、第78回ヴェネチア国際映画祭で最高賞(金獅子賞)を受賞。なんと審査員が全員一致で授賞を決定した。


アンヌの表情と後ろ姿にカメラが密着、観客は彼女の孤独な“闘い”を体験する。この衝撃作を手がけたオードレイ・ディヴァン監督と、難役に果敢に挑んだアナマリア・ヴァルトロメイに、創作のプロセスと〈映画の力〉について話を聞いた。


Index


ノーベル賞作家の代表作、大胆に映画化



Q:アニー・エルノーの原作小説「事件」を読んだ際の第一印象をお聞かせください。


オードレイ:私自身に妊娠中絶の経験があり、その後初めて小説を読みました。自分の経験を顧みたいと思ったのです。小説を読んで、自分が経験した合法的中絶と秘密にしなければならなかった当時の中絶の違いを知り、衝撃を受けました。そしてもうひとつ、私はこの小説を心理スリラーのように読みました。描かれている恐ろしいサスペンスに巻き込まれ、一気に読んでしまったのです。それが第一印象でした。


アナマリア:小説を読み、自分の無知に怒りを覚えました。アパートで秘密の中絶が行われていたという現実を知らなかった。主人公の少女と私は同い年なのに、そのことを知ろうともしなかった。それは私が過去にあった出来事の先を生きていて、恵まれているからです。この怒りを感じたことで、より強い決意をアンヌに与えられたように思います。このメッセージを伝えなければいけない。大きな責任を感じました。



『あのこと』© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILMS


Q:原作では主人公の考えや意志が饒舌に語られますが、本作はむしろ静かで穏やかな印象です。そのかわり、原作の言葉が人物の表情に置き換えられているように思います。小説言語を映像言語に置き換える上で、どのようなプロセスを取られたのでしょうか。


オードレイ:とてもきちんと映画を観てくださっていますね。アンヌの内面に渦巻く言葉については、いつもアナマリアとふたりで作業をしました。彼女が無言の時、その内面にどんな言葉があるのかを一緒に執筆したんです。アンヌが沈黙の中でどんなことを世界に語りかけようとしているのか、アナマリアには確固たる考えがありました。





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