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『モロッコ、彼女たちの朝』マリヤム・トゥザニ監督 求めたのは、親密な二人の女性の肖像画のような映画【Director’s Interview Vol.132】

©️ Ali n' Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions

『モロッコ、彼女たちの朝』マリヤム・トゥザニ監督 求めたのは、親密な二人の女性の肖像画のような映画【Director’s Interview Vol.132】

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モロッコ。娘を育てながら小さなパン屋を営むシングルマザーのアブラ。そこに突然、若い妊婦のサミアが迷い込んでくる。怪しみながらもサミアを受け入れるアブラ。孤独を抱えていた二人は徐々に打ち解け、お互いの心を開きあっていく──。


まるでフェルメールの絵画のような質感で描きだした、シンプルな日常と心の機微。それらが、モロッコ社会における女性たちの現実を浮き彫りにしていく。本作はカンヌ映画祭をはじめ各映画祭で絶賛され、アカデミー賞モロッコ代表にまで選出された。手掛けたのは、本作が長編デビューとなるモロッコの新鋭、マリヤム・トゥザニ監督。監督本人にオンラインで話を伺った。


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実際の経験だった、見知らぬ妊婦の訪問



Q:ある日常に外部の人間(stranger)がやってきて、そこから物語が始まることは過去の名作でもよく見られますが、この物語のアイデアはどのように思いつかれたのでしょうか? 


マリヤム:実はこの話は、私が実際に経験したことを元にしています。20年ほど前、妊娠8ヶ月の見知らぬ女性が、私の両親の家に突然訪ねてきました。彼女は行く当てもなかったようで、もしそこで助けてあげなければ、道端で出産してしまうかもしれないし、産んだ赤ちゃんを他人に売ってしまう恐れもありました。


また、もし未婚の妊婦が病院へ行けば、当時のモロッコの法律によって警察が呼ばれてしまう。私の父親は弁護士だったため、そのことをよく知っていました。それで、彼女と生まれてくる赤ちゃんを守るため、両親は彼女を家に招き入れたのです。それで私も、彼女と一緒に過ごすことになりました。


その後、彼女は無事出産し、だんだんと母親になっていきました。そして当然ですが、彼女と赤ちゃんの間には絆が生まれていました。しかし残念ながら、未婚の彼女が赤ちゃんを育て続けることは難しいため、養子に出すことは避けられない状況でした。そしていよいよ、赤ちゃんを養子に出す日がやってきました。私はその場に立ち会ったのですが、彼女はとりみだすことなく、じっと感情を抑えていました。尊厳に満ちた彼女のその姿に、若かった私は深く感動しました。



『モロッコ、彼女たちの朝』©️ Ali n' Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions


その後時を経て、私自身も妊娠し、赤ちゃんがお腹の中で動き始めたとき、彼女のことを思い出すようになりました。そして、自分の赤ちゃんを愛せず育てられないことが、どれだけ暴力的なことだったのかと、そのとき痛感したんです。


本作の全ての起源は彼女でした。彼女と出会ったからこそ生まれた映画なのです。彼女は私を変え、私の人生にとって重要な存在となりました。


両親の家を去った後の彼女は、まったく行方がわからなくなりました。そこで本作が公開される前に、彼女宛のメッセージを新聞に掲載することにしました。この映画のことを彼女に知ってもらうことはもちろんですが、同じような経験をしている女性たちに、映画を通して勇気を感じてもらえればと思ったんです。





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