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『燃ゆる女の肖像』映画をつむぐ、女たちの“まなざし”と神話的な愛の記憶

(c) Lilies Films.

『燃ゆる女の肖像』映画をつむぐ、女たちの“まなざし”と神話的な愛の記憶

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全米で記録的な大ヒット!ヨーロッパ映画の新たな傑作



 アメリカの映画興行ランキングなどを見ると分かるように、全米の市場では分かりやすい映画が求められることが多い。そんな中、ヨーロッパのアート系映画として異例の大ヒットとなったのが、フランス映画『燃ゆる女の肖像』である。全米での興行記録を塗り替え、歴代外国語映画ランキングのトップ20入りを果たしているという。


 2019年のカンヌ映画祭の脚本賞とクィア・パルム賞を受賞し、ゴールデン・グローブ賞の外国語映画賞候補にもなった。日本では20年の東京国際映画祭で上映されてチケットが完売になっている。



 ふたりの若い女性たちの美しい愛の物語で、舞台は18世紀のフランス・ブルターニュ地方の孤島である。主人公は画家のマリアンヌで、彼女はある伯爵夫人から娘、エロイーズの肖像画を描いてほしいと依頼を受ける。彼女はまもなくミラノに渡り、気の進まない結婚をすることになっていた。伯爵夫人はマリアンヌに自分が画家であることをふせて、絵を仕上げてほしい、と依頼する。前に雇った画家の前に娘は姿を現さなかったからだ。夫人に言われるまま、自身の職業を隠して、令嬢に近づくヒロイン。やがて、ふたりの心の色が変わり始め、互いに激しい情熱を感じ始める。


 女性たちの恋愛を描いた話題のラブストーリーとしては、50年代のニューヨークを舞台にした『キャロル』(15)があったが、今回は18世紀のフランスの孤島が舞台。まわりは海だけで何もないが、それゆえ、妙にミステリアスな印象で、かつて見たこともないような新鮮な世界観が生まれている。



(c) Lilies Films.


 無駄なカットがほとんどなく、ちょっと先鋭的な雰囲気もあるが、けっして難解ではなく、画家のヒロインがキャンバスを抱えて船で海を渡る冒頭場面から、すぐにひきこまれる。


 主な登場人物はすべて女性で、画家と令嬢、彼女たちの面倒を見る若いメイド、令嬢の母の伯爵夫人の4人だけ。舞台は屋敷が中心なので、舞台劇になりそうなコンパクトな作りである。クラシック音楽に例えれば、大がかりなオーケストラではなく、密度の濃い室内楽を聴くような感触がある。作品の完成度の高さを考えると、2020年に日本で公開されたベストなヨーロッパ映画の1本ではないだろうか。



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