(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』英国随一の脚本家&稀代の夫婦監督によるドリームチームがもたらしたもの
2018.07.13
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』あらすじ
全米女子テニスチャンピオンのビリー・ジーン・キングは怒りに燃えていた。全米テニス協会が発表した次期大会の女子の優勝賞金が、男子の1/8だったのだ。仲間の選手たちと“女子テニス協会”を立ち上げるビリー・ジーン。資金もなく不安だらけの船出だったが、著名なジャーナリストで友人のグラディス・ヘルドマンがすぐにスポンサーを見つけ出し、女子だけの選手権の開催が決まる。時は1973年、男女平等を訴える運動があちこちで起こっていた。女子テニス協会もその機運に乗り、自分たちでチケットを売り、宣伝活動に励む。
トーナメントの初日を快勝で飾ったビリー・ジーンに、かつての世界王者のボビー・リッグスから電話が入り、「対決だ! 男性至上主義のブタ対フェミニスト!」と一方的にまくしたてられる。55歳になって表舞台から遠ざかったボビーは、妻に隠れて賭け事に溺れていたのがバレ、夫婦仲が危機を迎えていた。再び脚光を浴びて、妻の愛も取り戻したいと考えたボビーの“名案”が、男対女の戦いだった。
ビリー・ジーンに断られたボビーは、彼女の一番のライバルであるマーガレット・コートに戦いを申し込む。マーガレットは挑戦を受けるが結果は完敗、ボビーは男が女より優秀だと証明したと息巻くのだった。逃げられない運命だと知ったビリー・ジーンは、挑戦を受ける。その瞬間から、世界中の男女を巻き込む、途方もない戦いが始まった──!
Index
キャストたちの好演、カメラの裏側での総力戦
時として映画は、様々な才能と才能のぶつかり合いによって想像以上の化学変化を巻き起こすことがある。例えば本作で言えば、まず真っ先に思い起こすのは、この映画の顔、エマ・ストーンとスティーヴ・カレルの存在だろう。
二人は共にキャスティングの第一候補。一時はストーンのスケジュールの都合でブリー・ラーソン(『 ルーム』)が代打となっていたとも言われる。だがその後、ストーンの予定がクリアになったことで再び彼女が返り咲くという結果に。製作陣はそこまでして演じさせたかったのだ。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』予告
結果、ストーンは気持ちの良いほどのエネルギーと意志の強さをあらわに、この役を見事に熱演。そしてカレルはカレルで、持ち前のコミカルな要素とシリアスな表情とを融合させながら、巧みに確信犯的なピエロを演じきった。二人は男女平等の是非を賭けてテニスコートで死闘を繰り広げる敵どうし。同一画面で演技を交えることは少ないものの、彼らがそれぞれの場所で戦い抜き、すべてを最終局面のエキシビジョン・マッチへと集約させていく過程は、人間ドラマ、スポーツドラマ、そして社会派ドラマとしても見所たっぷりである。
だが本作ですごいのは何も表舞台のキャストだけではない。1973年に全世界で9,000万人がTV観戦したという「性差を超えた闘い(Battle of the Sexes)」を描く上では、カメラの背後でも、映画界屈指の才能たちによる総力戦が展開されていたのだ。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
なにしろ本作には、英国随一の書き手とも称される脚本家サイモン・ボーフォイと、『 リトル・ミス・サンシャイン』(2006)で世界中の映画ファンに笑顔と元気をもたらした映画監督ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスがタッグを組むのである。さらに製作には、あのダニー・ボイルの名も踊る。この夢のようなクレジットの連なりに期待するなと言うのは無理な話だ。