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『市川雷蔵映画祭 刹那のきらめき』レストア担当:新井陽子 × グレーディング担当:阿部悦明 50年以上前のフィルムは如何にして甦ったのか【CINEMORE ACADEMY Vol.36】

※向かって左よりIMAGICAエンタテインメントメディアサービス新井陽子氏、同:阿部悦明氏

『市川雷蔵映画祭 刹那のきらめき』レストア担当:新井陽子 × グレーディング担当:阿部悦明 50年以上前のフィルムは如何にして甦ったのか【CINEMORE ACADEMY Vol.36】

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映画デビュー70周年を記念して開催中の『市川雷蔵映画祭 刹那のきらめき』。今回上映されるラインナップの中には、『新源氏物語』(61)『陸軍中野学校』(66)『華岡青洲の妻』(67)など、4Kデジタル修復版として新たに甦った作品も含まれている。


50年以上前に作られたフィルムを4Kデジタルとして生まれ変わらせたのは、株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス(以下Imagica EMS)のスタッフの面々。スキャンしたフィルムの傷やゴミを取って補修するデジタルレストレーション(以下レストア)作業担当の新井陽子氏と、レストア後の映像について色味や明るさを調整するカラーグレーディング作業担当の阿部悦明氏のお二人に取材を実施。50年以上前のフィルムは如何にして甦ったのか? デジタル修復作業の詳細について話を伺った。


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最初の作業はフィルム自体の修復



Q:Imagica EMSさんが今回担当された作業は、フィルムスキャン→レストア→グレーディングでしょうか。


新井:大まかにはその流れですが、KADOKAWAさんからフィルムをお預かりして、そのフィルムの状態チェックや補修をやるところから担当しています。


Q:保管されていたフィルムはどのような状態でしたか。


新井:フィルムの確認やスキャンは大阪で行っているため私は直接見ていませんが、かなりの年数が経っているもののフィルムの状態は悪くなく、とても大切に保管されていたようです。なお、フィルムは全てオリジナルネガでした。


Q:リマスター作業ではフィルム自体も修復されるのですね。


阿部:フィルムの状態が悪いとフィルムをスキャナーにかけた時に裂けたり、切断されてしまうことがあります。また、フィルムの“繋ぎ”が外れてしまうこともあるので、とにかくまずはフィルムを全てチェックして修復を施す必要があるんです。あと大事なこととして、必ずフィルムを綺麗にした状態でスキャンするようにしています。



『眠狂四郎炎情剣』©KADOKAWA 1965


Q:ホコリや毛クズみたいなものは、洗浄である程度取れるのでしょうか。


阿部:それでも付着の強いものは簡単には取れません。拭いても取れないものがあるので、そういうところはデータ上で対応するしかないですね。


Q:スキャンしたデータはかなりの容量になりそうですが、大阪から東京まで物理媒体で運ばれるのでしょうか。


新井:昔はハードディスクでの搬送しか手段がありませんでしたが、今は大阪と東京の営業所がネットワークで繋がっていますので、時間は掛かりますがデータ転送出来るようになっています。


Q:そうして送られてきたデータを元に、傷を消していくレストレーション作業から始まると。


新井:そうですね。ただ場合にもよりますが、レストアの前にプリグレーディングという作業を挟むことが多いです。


阿部:ある程度色が揃っていないとレストアがやりづらいことと、その後グレーディングをしたときに、消えたはずの傷が目立って来ることがある。そのためにも、ある程度グレーディングをした上でレストアを始めるようにしています。





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