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『港に灯がともる』安達もじり監督 × 富田望生 大事にしたのは“時間”を描くこと【Director’s Interview Vol. 465】

『港に灯がともる』安達もじり監督 × 富田望生 大事にしたのは“時間”を描くこと【Director’s Interview Vol. 465】

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セリフを聞く表情からわかるもの



Q:セリフを話している人と聞いている人がいるときに、聞いている人の表情がすごく印象に残りました。会話のカットバックなどはあえてされなかったのでしょうか。


安達:これはドラマを撮る時も結構やっているのですが、あくまでも題材に対してどう向き合って撮れば良いかという表現の一つだと思います。灯の周りの人が何かを話しているとき、それを聞いている灯の表情を見ているだけで全部が伝わって来るような瞬間が結構ありました。それで細かくカットを割るようなことはせずに、カメラをドンと置いてずっと見つめていたかったんです。


Q:相手のセリフを聞いているところを撮られるという感覚はどのようなものでしょうか。


富田:今までは、相手がある行動に至るための要因になるにはどうするべきかという考えのもと、現場に行くことが多かったんです。それが今回は、相手から発せられるもの、この空間で生まれているものを、私自身がどれだけキャッチできるかということに徹していました。灯はセンサーを張って何気ない言葉をキャッチしているんです。相手の役者さんから何が発せられるかわからない。それは本当に未知の世界ですごく新鮮な感覚でした。



『港に灯がともる』©Minato Studio 2025


撮影に関して言うと、山中崇さん演じる青山さんの話を聞いているシーンなどでは、青山さんの方は一切撮らないんです。それで私、一度もじりさんに言ったんです「青山さんの顔を見てほしい。こんな目で、こんな優しさで私に向かってくれているこの人を、ぜひ皆さんにも知ってもらいたい」と。でも、もじりさんは「灯の表情を見ていたら、青山さんがどんな顔で灯に向かっているかわかるので、青山さんは撮りません」と言われました。だからあのときの青山さんの目は灯しか知らないんです。本当にあの目はすごかった。


同じシーンで、青山さんが「父親はアル中で死んだけどな」と言うセリフがあるのですが、その直後に私の心拍数が異常に上がったらしいんです。隠してつけていたピンマイクがその音を拾ったとスタッフが教えてくれました。心拍数をあげるなんて、やろうと思っても出来ることではない。そういった生理現象が起こっていたことにすごく驚きました。そして、そういうことをすごく丁寧に見つめてくれるチームだったんだなと思います。


Q:青山さんの表情も一応撮っておこうとはならなかったのでしょうか。


安達:「一応撮っておこう」ということは、これまでの経験上成功した試しがない。現場がどツボにはまるだけなのでやりませんね(笑)。





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