![『ハイパーボリア人』クリストバル・レオン監督&ホアキン・コシーニャ監督 × 八代健志監督 『オオカミの家』に続くアナログ手法の映画制作【Director’s Interview Vol.470】](https://cinemore.jp/images/575d666deb44c1713b2be6041ecbe74a5bcbeb0fccdd4a9931b4ebb177fbbc80.jpg)
向かって左よりクリストバル・レオン監督、ホアキン・コシーニャ監督、八代健志監督 © Leon & Cociña Films, Globo Rojo Films
『ハイパーボリア人』クリストバル・レオン監督&ホアキン・コシーニャ監督 × 八代健志監督 『オオカミの家』に続くアナログ手法の映画制作【Director’s Interview Vol.470】
2023年、日本のミニシアター界を熱狂させた『オオカミの家』(18)で鮮烈な長編映画デビューを果たし、『ミッドサマー』(19)のアリ・アスター監督作品『ボーはおそれている』(23)のアニメーションパートとビジュアル開発を手がけるなど、話題をさらっているチリのビジュアル・アーティストコンビ、クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ。二人の新作『ハイパーボリア人』が2025年2月8日(土)日本公開される。
実写、ストップモーション、操演(あやつり人形)、2Dアニメーション、影絵、演劇的表現などあらゆる技法が入り混じった「映画の闇鍋」と評される今作の公開を前に、ストップモーション作品『ごん-GON,THE LITTLE FOX-』(19)『プックラポッタと森の時間』(21)の八代健志監督とのリモート対談を実施。
ともに「手作業で作ること」にこだわって映画を作り続ける監督たちに、制作のプロセスや大切にしている想いを聞いた。
『ハイパーボリア人』あらすじ
女優で臨床心理学者でもあるアントーニア(アント)・ギーセンは、謎の幻聴に悩まされるゲーム好きの患者の訪問を受ける。彼の話を友人の映画監督レオン&コシーニャにすると、2人はその幻聴は実在した外交官にして詩人、そしてヒトラーの信奉者でもあったミゲル・セラーノの言葉であることに気づき、これを元にアントの主演映画を撮ろうと提案する。2人に言われるがまま、セラーノの人生を振り返る映画の撮影を始めるアントだったが、いつしか謎の階層に迷い込み、チリの政治家ハイメ・グスマンから、国を揺るがすほどの脅威が記録された映画フィルムを探す指令を受ける。カギとなる名前は”メタルヘッド”。探索を始めるアントだったが、やがて絶対の危機が彼女を待ち受ける……!
Index
いくつもの表現が重なり合う独特な世界
Q:はじめに、それぞれの作品に関する感想をお聞かせください。
コシーニャ:八代監督が参加された『HIDARI』のパイロットフィルムを拝見しました。本編が完成したらきっと非常に美しい作品になると感じましたね。パペットの動き、特にアクションが美しかったので、ストップモーション作品としても面白いものになると思いますが、それだけではなくアクション映画としても非常に魅力的で見応えのあるものになるのではないかという印象を受けました。
レオン:日本から帰ってきたホアキンに『HIDARI』のことを聞きました。ものすごく面白いし、早く本編を見てみたい。私たちの仕事とも繋がっている、縁を感じる作品だと感じました。
八代:ありがとうございます。
Q:八代監督にお聞きします。『ハイパーボリア人』はいかがでしたか?
八代:俳優さんが演じているという実写の面白さにプラスして、コマ撮りだけではなくあらゆる技法の玉手箱のようですね。次に何が出てくるか分からない面白さを感じました。
その中で、現実と虚構が重なり合う表現が特徴的でした。僕らはアニメーションは必ず虚構である前提で作っていますが、『ハイパーボリア人』ではストーリー上でも現実と虚構が重なり、映像としても実写(現実)と、アニメーションや操演など(虚構)がたくさんの表現技法と重なっている。普段僕らは特定の技法に絞って一本の映像を作っているけど、それがいかに固定概念で作っているかということに気づかせてくれる。そこに学びや面白さがありました。
『ハイパーボリア人』© Leon & Cociña Films, Globo Rojo Films
レオン:ありがとうございます。私たちは題材も常に政治的・社会的なこと、つまり「現実」にフォーカスしたドキュメンタリー的な要素をテーマに作ることが多いです。また、あえて作っている過程を見せていくようにしていますが、それは制作の「現実」を見せることでもある。「現実」にこだわって作っていくためにそういったプロセスを踏んでいます。
もちろん中にはフィクションの要素も入りながら、フィクションと現実をミックスしたような作品作りを意識しています。
コシーニャ:私もクリストバルの意見と同じです。付け加えて言うなら、いつも作品、創造物の中には「夢」的なものが存在すると考えています。現実的なものと、現実的ではない夢のようなもの、それらを同時に表現できるのが映画ではないかと。それは私たちがやっているアニメーションだけではなく一般的な映画や商業的な映画にも言えることですが、現実と夢が共存できること、それが良いところだと思います。
八代:現実と夢を普通に表現するとき、色々な手順を踏みながら作っていくことが多いと思うのですが、お二人の作品はそういうところが自由というか、奔放というか、そこがとても羨ましく思います。
レオン&コシーニャ:ありがとうございます。